本物の投信ビジネスとは

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金融庁が前面に出て、日本の投信ビジネスを「まともな方向へ誘導しよう」としている。 新年から始まる積立て NISA という新制度を通じて、やや強引にだ。

やや強引にと書いたが、そうせざるを得ないほど酷いのが、日本の投信業界である。 このまま放置しておくと、国民の財産ひいては日本経済に大きなマイナスをもたらすのは必定。

投信という国民の財産づくりに最適な投資商品を、日本の証券会社は昔から手数料稼ぎの道具にしてきた。 そこへ悪乗りしてきたのが、銀行と郵便局である。

いってみれば金融業界全体が手を携えて、販売手数料が稼げるようなファンドを次から次へと世に出しては、乗り換え営業を繰り返しているのだ。

日本の投信業界を見渡すに、6000本ほどの投信ファンドを販売しているが、長期の採算づくりという点で、まともな成績を残しているファンドは限りなくゼロに近い。

大半のファンドが、その時々で人気となっている投資テーマを囃して大量販売を仕掛ける。 投資家人気が過ぎ去った後は、成績悪化で大量解約ラッシュとなり、最終的にはジリ貧の道をたどっている。

あるいは、毎月分配型の投信が高齢者に人気があるからといって、より高額分配のファンド設定を競う。 その挙げ句、運用成績からのみならず投資元本を取り崩してまで、毎月の分配金にあてるケースが続出してきた。

どちらも、国民の長期的な財産づくりに寄与するどころではない。 金融業界あげての金儲けに、投信という商品が悪用(?)されてきたわけだ。

そういった酷い状況を、もはや看過できないということで、金融庁が動いた。 日本の投信ビジネスに自浄意識も意欲もみられないのに、業を煮やした形である。

投信業界が本来目指すべき姿を見失っているのならと、あるべき方向へ一つの道筋を立ててやったのが、積立て NISA の制度である。

笑ってしまうのが、金融庁が定めた積立て NISA のガイドラインに乗ってくるのが、6000本中たったの50本しかなかったという現実。

さすがに業界も、これはマズイと大慌てで積立て NISA 用のファンドを新規設定して、全部で120本ほどを年初からの制度発足に間に合わせた。

新制度がはじまれば、いろいろ見えてくる。 一番の問題は、積立て投資の実績がそう上がらないだろうということだ。

業界が挙って積立て NISA 用のファンドを新規設定するものの、それなりの運用成績を上げていくだけの体制と準備を整えているかどうかは別問題である。

これまで日本の投信業界が、本当の意味での運用成績を残していく経営をしてこなかったツケが、3年もしないうちに噴き出てこよう。

その過程で、本物の投信ビジネスを心掛けてきたところが、大きく浮上することになろう。