脅しとディール(取引)を前面に出したトランプ政治で、マーケットは大揺れとなっている。
世界各国に対し、高い関税率を課せば米国の税収は高まり、米国が抱える世界最大ともいわれる債務残高を減らせる。
高い関税率をなんとかしてくれと言ってくれば、その国からは米国に好都合な条件(取引)を引き出せる。
どちらにしても、米国にとってはプラスしかない。 これが、トランプ政治の骨子だ。
自分のことしか考えず、力まかせで押し切ろうとする彼の強引さに、世界のマーケットは慌てふためいた。
とりわけ、各国の株式市場では激震が走って、20%前後の下げを記録した。
関税戦争で、たとえば中国に対しては104%という高率を課し、世界経済が大きく落ち込むのを嫌気してのこと。
マーケットでの反応はいつでも即座だが、経済活動に影響が及んでくるには時間がかかる。
これから時間の経過とともに、経済の現場あちこちから悲鳴が湧き上がってこよう。
なにしろ、高関税は米国も含め輸入物価を押し上げ、各国のインフレ率を高める要因となっていく。
当然のことながら、金利は高めで推移していく。 それが企業経営を圧迫しだす。
現に、ジャンク債市場がくすぶりだしている。 経営基盤の弱い企業など格付けの低い発行体による債券だ。
高利回りを良しとして買ってきた機関投資家などは、発行体のデフォルト(倒産)リスクに身構えだしている。
そのうち、多くの企業から業績の下方修正が相次ぎ、成長率の鈍化も報じられるようになっていく。
そういった実体経済の悪化が、株式市場などマーケットに重荷となってのしかかってこよう。
そのあたりから世界のマーケットは、いよいよ本格的な下げに入っていくことになろう。
経済ファンダメンタルズの悪化に、インフレや金利高止まりがのしかかってくるのだ。
世界のマーケットが大きく下がれば、その先では資産デフレという厄介な問題が浮上してくる。
カネ余りバブル高に乗って買い上がってきた機関投資家や投資ファンドなどの間で、投資評価損が大きく膨れ上がる。
それに対し、受け入れた投資勘定や借入金などの資金勘定は、まるまる残っている。
大きく目減りした資産勘定との差額を、資産デフレという。 それをなんとか穴埋めしなくてはならない。
とはいえ、マーケットの大幅下落や経済環境の悪化で、巨額の資産勘定が蒸発したように消え去った。
それをなんとかしなければならないとなり、凄まじい現金不足が発生する。
ここまでのカネ余りとは真逆の超カネ不足が、マーケットや経済の現場に覆いかぶさってくる。
当然のことながら、市場での金利は高騰し経済活動全般に大きなブレーキとなっていく。
それもこれも、経済合理性を無視したトランプ政治が引き起こした大混乱となって、歴史に刻まれよう。