こと経済に焦点を当てて考えると、どんな不合理や歪みも、時間の経過とともに解消されていく。
それを、経済合理性が働いた、あるいは経済合理性への回帰という。
いまトランプ政権が相当に無茶苦茶をやっている。 それも、トランプ氏の自己顕示欲まる出しといった形で。
世界最大の経済と軍事力を背景に、MAGA (アメリカを再び偉大に)と叫んで、一方的な政策を押し付けている。
彼からすると、力まかせの取引(ディール)で成果を出して、彼の偉大さを世に見せつけたいのだろう。
ただ、強引に成果(?)を挙げたところで、経済合理性のしっぺ返しは免れない。
たとえば、積年の貿易赤字を一掃するため、米国への輸入関税を大幅に引き上げると打ち出した。
それに対し、各国は個別交渉で税率の引き下げや、対象品目の例外化を求めている。
どこまで個別交渉が進むかは別として、関税の引き上げは必ず輸入物価の上昇を招く。
米国の消費者はトランプ関税の分だけ高い商品を買わされるわけだ。 輸入大国の米国にとっては大きな痛手である。
それが、国内物価の上昇や消費減退を招き、米国経済の成長率ダウンにつながっていく。
となると、トランプ関税で米国の貿易収支は改善に向かうとしても、米国全体では税収減となっていく。
これが、経済合理性のしっぺ返しだ。 経済成長率の鈍化は、来年11月の中間選挙でトランプ共和党に苦戦を強いることにも。
あるいは、トランプ政策の方向は富裕層にとりわけ有利とされる。
それでなくとも、米国での低所得化傾向や貧困層の増加が、ずっと問題視されていた。
いくらアメリカンドリームの国だといっても、低所得層や貧困層の増加は社会の不安定化と構造的なインフレ要因を招く。
構造的なインフレ要因? そう、どうにも食っていけない人々が賃上げ要求に走る。
すると、彼らの多くが働いている労働集約産業を中心にコスト上昇要因となっていく。
その人々がある程度まともに生活できる水準まで賃上げ要求は続く。 つまり、構造的なインフレ要因となっていくわけだ。
つまり、トランプ政策を推し進めれば、その先ではコストプッシュ・インフレが待っているのだ。
これまた、経済合理への回帰現象である。 そのうち、企業の収益動向も怪しくなってくるのだろう。
つらつら考えるに、いま米国もEUそして日本も株高に沸いているが、それに浮ついていて果たしていいのだろうか?
われわれ本格派の長期投資家からすると、ずっと前からの読みである、大きな崩れへの準備は怠れない。