高市政権がスタートした。 日本初の女性首相ということで、表題の見出しをマスコミ報道でみた。
1979年から英国の首相となって、鉄の女と呼ばれるほど強気の政治で英国を復活させたサッチャー氏はよく知られている。
一方、メルケル氏は強いドイツの首相として、また長い在任期間としても歴史に名が残るだろう。
ただ、前任のシュレーダー首相の功績は、メルケル氏よりもはるかに大きく、もっと評価されるべきである。
1996年にドイツの首相となったシュレーダー氏は、ふたつの大改革をやり遂げた。
社民党の党首として、本来は労働者よりの政治をするはずのシュレーダー氏だったが、労働改革をやってのけたのだ。
1990年に統一ドイツが成立してからは、ヨーロッパの病人と呼ばれるほどの停滞に陥ったドイツ。
長く繫栄ボケに浸ってきたこともあって、休暇ばかり取るのに、あまり働かなくなった西ドイツ国民。
そんなところへ、決められた仕事しかしない、サービス意欲などまるでない東ドイツの国民が加わった。
ドイツ経済がどうにもならない低迷に陥ったのは、もう当然のことだった。
シュレーダー首相の労働改革は、企業に対し働かない労働者は、どんどんクビにしてよろしいという熾烈なもの。
待遇改善ばかり求めて、さっぱり働かない労働者を抱えたドイツ企業は競争力がどんどん落ちていっていた。
それでは企業も、そしてドイツ経済も、とうていやっていけない。
ならばということで、企業に働かない労働者をクビにする自由を与えて、先ずは企業を立ち直らせる。
もちろん、大量に発生する失業者には国が手厚い生活保障を与えると同時に、労働者の再教育を徹底した。
この労働改革にドイツ中が猛反対と大混乱の渦に巻き込まれたが、シュレーダー首相は一歩も引かなかった。
もうひとつは、銀行に保有している企業の株式をすべて強制売却させたことだ。
それでもって、ドイツ企業を銀行支配から解放させた。 もっとも銀行は、売却益課税を免除されたから文句なしだ。
このふたつの政策で、ドイツ企業は生き返った。 そこへ、2000年にEUが発足して、ヨーロッパ市場は一気に広がった。
それ以降は、ドイツの一人勝ち状態がずっと続き、昨年には日本を追い抜いて世界第3位の経済大国に躍り出た。
大功績のあったシュレーダー首相だが、国民の反発はまだ残っていて、2002年の総選挙に敗れて政界を去った。
その後に登場したのがメルケル首相であって、シュレーダー氏の功績を引き継いだラッキーな面は否定できまい。
さあ、高一氏を含め日本の政治家の誰が、シュレーダー氏のような大改革をやってのけるだろうか?
