インフレの兆し、ひたひたと

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 アベノミクスや黒田異次元金融緩和など、国を挙げてデフレ脱却を急いでいる。 先進国では半世紀以上ぶりというデフレ経済に、日本は10数年にわたって苦しんできた。

 その間に、新興国の急速な経済成長はもちろんのこと、先進国でさえどこも経済規模を2倍以上に拡大している。 一人、日本経済だけが長い低迷とじり貧にあえいできた。 国民一人あたりの富も増えるどころか、ジリジリと下がっていったが、デフレの恩恵で生活水準は何とか維持できた。

 それもあってだろうが一部に、日本はもう成長を望まない方がいい、それよりも生活の質を良くしていくべきだといった見解も出てきている。 ちょっとめには、もっともらしく聞こえるが、きわめて危険な現状肯定である。 ユデガエルに一直線の考え方と切り捨てたいほどだ。

 米国のようにエネルギーや資源をほぼ国内で調達できる国ならいざ知らず、日本はほとんどを輸入に頼っている。 そんな日本が海外の成長に取り残されたまま、生活水準を維持するなど不可能の一言である。

 早い話、金融バブル崩壊の影響を受けて世界経済は成長率を下げているが、原油や LNG の価格は高止まったままである。 資源価格も中国の輸入スローダウンで一時の高騰は影を潜めているが、大きく下がる気配はない。

 そして、世界人口は現在の71億人が2050年には96億人に達するといわれる。 (国連人口推計、中位値) 地球上の人口が毎日18万5000人ずつ増えていくわけで、今後どれほど大量のエネルギーや食料・水・工業原材料が必要となるか、もう想像を絶するものがある。

 つまり、世界経済は構造的なインフレ要因を抱えているわけだ。 となると、エネルギーや資源を輸入に頼らざるを得ない日本経済は、ある程度の成長を目指さないと世界のインフレ基調に購買力がついていけなくなる。

 日本人の生活水準を維持していくためには、経済成長で国民全般の購買力を高めること。 そして、円高で輸入物価を抑えることがキーワードとなってくる。

 ここへ来て、ようやくデフレ脱却が見え始めてきたが、まだ力強い経済成長とまではいっていない。 一方、安倍政権発足のちょっと前からまじまった円安傾向で、輸入物価は相当に上昇している。 そこへ原発の稼働停止で化石燃料の輸入が大幅増加し、電力料金の引き上げとなっている。

 国や日銀は2%のインフレを、なにがなんでもの目標としている。 その横で、原発の再稼働あろうがなかろうが輸入物価は上昇基調にある。 もうそろそろ、デフレ脱却どうのこうのではなく、来るインフレへの対応を考えておいた方がいい。

 その辺り、さわかみファンドでは準備怠りないが、世の中的にはまったくの無防備といった状況にあるのではなかろか。