大きな構想(後編)

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   金曜日の続きです。

 第6として、個人の預貯金マネーが本格的な長期投資に向かうことで、個々人の自分年金づくりを進められると同時に、日本経済の活性化に大きく貢献できる。 その流れを作るには、ひとえに本物の長期保有型ファンドがしっかりした運用成績を積み上げることだ。 それによって、誰もが納得し安心して預貯金を引き出して長期投資に向かわせることが出来る。

 日本における長期投資のパイオニアとして、さわかみファンドの責任は重い。 ありがたいことに、12万人のファンド仲間の皆さんが一緒に頑張ってくれており、本格的な長期運用の道を突き進んでいる。 今は目先の成績に目をつむってでも、将来に向かっての猛烈な買い仕込みを続けているから、いずれ大きな成果を世に示すことが出来る。

 そうなれば、771兆円の預貯金マネーに対して本格的な長期投資のすばらしさを、実績でもって訴えることが出来る。 なにしろ、さわかみファンド仲間は日本人1000人に一人なんだから、長期投資やっていて良かったという実感を持っていただけるようになると、ものすごい口コミ効果が期待できる。

 それはそのまま、預貯金ツンドラから溶け出した個人マネーが、長期投資をベースとした経済活性化をやってのけてしまうという、成熟経済ならではの流れをつくることになる。 日本経済に元気が出てくれば、国民全体の所得も増えるし、みなにとって幸せである。 

 同時に、第7として日本株市場の株価形成における本格的な長期投資の影響力が高まる。 これは、年金運用中心に短期指向が主流になってきている世界の株式市場に対し、歴史的な一石を投じることになる。 世界的にみて機関投資家運用は毎年の成績に追いまくられるあまり、本格的な長期投資が出来なくなっている。 それは年金受益者にとっても良いことではないが、四半期決算の業績数字に一喜一憂するなど企業経営にもしわ寄せが来ている。

 ところが、日本株市場で長期投資家の存在感が高まれば、新興国はじめ世界中の伸び盛りの企業が資金調達する際に選択の幅が大きく広がる。 いまなら、ニューヨーク市場やロンドン市場に上場することで、短期の業績数字にこだわった経営を強いられる。 それが、東京市場には本格的な長期投資家が一杯いて、常に10年視野の経営を熱く応援してくれるとなれば、長期の成長を目指す企業にとっては、どれだけありがたいことか。 そういった企業は雪崩を打って、東京市場への上場を目指すことになる。

 世界の伸び盛りの企業が大挙して東京へやってきたら、日本の個人は日本株市場で為替変動の心配もなく、世界の成長企業に投資できるようになる。 もちろん世界中の長期運用マネーもどんどん日本へやってくる。 世界の企業やお金が東京へ集まってくれば、情報と資金が流れ込むことで新しい産業が生まれることにもなる。 日本は金融立国ではなく、運用立国として世界に覇をなすことになる。

 第8に、日本が長期投資をベースとした運用立国になっていけば、世界のマネーバランスにも大きな影響を及ぼすことになる。 今現在はアングロサクソン流の狩猟民族的な価値観が世界のマネーを支配している。 しかし、ちょっと長めでみれば今後のアジアの経済的な台頭もあって、農耕民族的な価値観のウエイトが高まっていくのは容易に想像できる。

 すべてを刈り取って、後は野となれ山となれの狩猟民族とは違って、作物を育てる価値観は長期投資のものでもある。 育てる価値観が世界のマネーの流れで重みを増してくると、世界の経済発展をよりしっとりしたものにしていってくれる。 これは世界中の人々にとって良いことである。 世界最大の眠れる資源である個人の預貯金マネーを擁する日本は、われわれ長期投資家が先導することで世界にとんでもなく大きな貢献が出来るのだ。

 ざっと、大きな構想を書き出してみた。 これは、投信での話。 さわかみグループでは、それをさらに発展させて直接金融を広めることで、もっと大きな夢を追いかける方向にある。 それは、また別の機会に。

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 本の紹介です。電子書籍版で、スッと読めるボリュームに抑えています。 さわかみ投信現社長の黒島の本も合せてご紹介します。ちなみに、黒島の本は紙媒体も用意しております。

 澤上篤人「お金をまわして日本を元気にさせよう」
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 黒島光昭「特許物語」
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