公的年金の株式投資拡大

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 公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) の運用指針の見直しで、日本株運用の基本比率12%を20%にまで引き上げられる可能性が報道されている。 

 12%から20%へだと8%ポイントもの上乗せなので、株式市場にも相当に大きなインパクトになると期待大である。 なにしろ、1%の組み入れ比率上昇で1兆円強の日本株買いとなるのだから。

 といっても、昨年末までの株高を受けて総資産の17%にまで組み入れ比率は上昇した。 それを考慮すると、ここからはせいぜい3%強の買い増しに過ぎない。

 それでも、日本株市場には大きな支援材料となる。 いつも書いているように、日本にはまともな買い手がいないから株価全般がこれほどまでに低迷する。

 企業の業績回復ぶりからみるに、1兆円でも2兆円でもどしっと腹の据わった買いを入れてやれば、株価水準はもっともっと上に行ってもおかしくないのだから。

 どちらにしても株価上昇は歓迎だが、今日のテーマは別のところにある。 公的年金が株式投資ポジションを引き上げるのは、きわめて合理的な判断である。 むしろ、20%どころか30%~40%に上げても構わない。

 なぜなら、現在の債券投資比率60%前後というのが相当にリスクの高い運用となっているからだ。 たとえば、10年物国債で年0.5%台の利回りしか得られない上に、将来の価格下落リスクをたっぷりはらんでいる。

 一方、株式投資であれば予想配当利回りでも1.9%台にあり、銘柄選択さえ間違えなければ収益向上という株価支援材料もある。 企業の解散価値を示す株価純資産倍率でいっても、1倍以下の銘柄がゴロゴロしているのだ。

 もうひとつ、アベノミクスがデフレ脱却と日本経済の活性化を目指しており、それを先取りする運用を公的年金がやってもなんらおかしくはない。 ここで株式投資比率を引き上げることは、政府の政策に対し整合性の高い経済行動となる。

 考えたらわかる。 デフレ脱却と成長戦略は企業活動の活発化に直結する。 それならば、公的年金も株式投資比率を引き上げて政府の政策を側面支援すると同時に、将来の株価上昇の恩恵を期待するのが妥当であろう。

 一方、デフレ脱却で物価は上昇するし金利も上がる。 となれば、国債など債券価格の下落リスクは高まるわけだから、今のうちに債券投資比率を下げてしまう。

 これは、さわかみファンドが運用の基本としている、アセットアロケーションの切り換えの一環でもある。 不況時から景気が回復に向かい過熱気味になるまでは株式投資100%でいくのだ。 債券投資は一刻も早くゼロに持っていく、それが一番合理的な投資行動である。

 アセットアロケーションの切り換えとは、損失リスクを少なくしておく一方で、投資リターンの獲物を捕りやすいように網を張り替えることである。 経済全体のお金の流れを先取りする、きわめて合理的な投資行動となっていく。