後世の人々は、この30年間の日本経済について以下のような論評をするだろう。 日本経済は政策運営で、ことごとくボタンの掛け違いをしたため、本来の力を発揮するどころか大きな禍根を残してしまったと。
本来の実力からみてみよう。 少子高齢化が進み人口は減っていく方向にあるとはいえ、いま現在で世界10番目めの人口大国。 2050年に1億人を切るといわれるが、それでも世界からみると16番目か17番目の堂々たる大国である。
経済規模はこの20年というもの、まったくの伸び悩みを続けている間に、米国やヨーロッパなど先進国でさえ2倍に拡大した。 それでも、中国に抜かれて世界第3位に落ちただけ。 次の経済大国と目されるインドあたりが追い付いてくるまでには、まだ相当な時間がかかる。
世界最大の債権国の立場は不動だし、個人の預貯金マネーは810兆円と世界で断トツの大きさである。 輸出企業中心に生産体制のグローバル化が進み、日本からの輸出額は縮小トレンドにあるものの、日本企業の世界全体における生産力はむしろ増加している。
ここへ来ての人手不足が示すように、日本の失業率は世界に例のない低さで推移している。 労働力がずっと売り手市場であるということは、それだけ日本の雇用が安定しており消費基盤は強い証明である。 こんな具合で、日本経済がこれほどまでに低迷する理由はどこにもない。
ところが現実は、先進国で最悪の財政赤字が独走状態にあり、毎年の予算で40%強は国債発行に頼っている。 国は既に1031兆円の借金を抱えており、このまま借金財政が続くわけがない。 いつどこで、財政破たんと国債暴落そして長期金利の急騰が起こっても不思議ではない状況にある。
一方、年金や医療保険の積立て制度は世界トップクラスの充実ぶりだが、それでも足らず毎年の社会保障関連で税負担が予算の31%強を占めている。 高齢者や国民の生活を守るとはいうものの、その財源はきわめて脆弱である。 さて、こんな無理がどこまで続けられるものか。
どうして、こんなボタンの掛け違いが発生し、そのまま20年間ずるずると走ってきたのだろう? そこで、冒頭に書いた30年間が意味を持ってくる。
日本経済は1980年代に入って急速に成熟化の様相を見せ始めた。 ところが、それまでの高度成長の勢いを駆ってバブルに突っ走った。 バブル崩壊後の後始末も、高度成長期の政策発想から一歩も出ないものばかりを連発した。
成熟化を深める日本経済に、発展途上時代そして高度成長期の経済政策では、ミスマッチングとなるのは必定。 そのミスマッチングが、ボタンの掛け違いというわけだ。
どうしたら良いのか? この長期投資家日記にこれまで幾度となく処方箋というか政策アイデアを書いてきたから、それを読み直してもらいたい。
まあ、気が向いたら明日にでも書きますか。