成熟経済と財政赤字

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 昨日、”ボタンの掛け違い” を書いた。 日本経済の運営がいまだに高度成長期の政策発想を引きずっており、経済の成熟化を深めている日本にまったく合わない、そこに問題の根があるという主旨。

 経済の発展段階から高度成長期では、国中に成長意欲がみなぎっており、国の税収も法人税や所得税といった直接税で十分やっていける。 また、潤沢な税収をベースとした予算ばら撒きが、地方経済の活性化などに貢献するというプラス回転になる。

 日本の場合は、そこへ世界最大の国営銀行である郵便貯金で集めた巨額資金を、財政投融資としてダム建設などのインフラ投資にまわした。 国会の審議を必要としない第2の予算ということで、政治家や役所の自由裁量に任された。

 ところが、成熟経済ともなってくると、それらのすべてがマイナス回転しだす。 先ず、成長力が落ちて法人税収や個人の所得税収が減り、直接税をベースとした予算編成が難しくなる。

 一方で、潤沢な予算ばら撒きによって成り立ってきた地方経済や政府系事業は、低成長だからと一層の予算投入を迫る。 それが、1992年から毎年平均して19兆円ちょっとの各種経済対策予算である。 ここに、財政赤字拡大の第1原因がある。

 次に、経済の成熟化で国におんぶで抱っこでやってきた企業や政府系事業は、ますます国の景気対策などに頼る度合いを強める。 本来は、時代適合性を失った企業や税金を食うだけの事業体は自然淘汰に任せてしまうべきだが、日本はそういったところを存続させる方向で巨額の税金を投入してきた。 いわば後ろ向きの予算投入が、財政赤字の第2原因である。

 しかるに、成熟経済では常識の直接税への依存度を下げて、消費税つまり間接税で国民に広く浅く負担してもらう政策をためらってきた。 その結果、国の税収は増えず財政赤字拡大の第3の原因となった。 

 では、成熟経済での政策運営とはどんなものなのか? 思い切った規制緩和と民営化で、役所の関与やコスト意識と時間感覚に疎い官営事業を極力減らす。 また、富を創出せずただ税金を食うだけのところへの予算投入は、たとえば5年以内に全廃する。

 返す刀で、消費税を社会福祉税に組み替えて15%に引き上げる。 国民に広く薄く負担してもらうが、その全額は年金や健康保険など国民の福祉にまわすことにする。

 出を制して、入りを図るのは財政再建の常識である。 上の3つを一気にやってしまえば、3年もしないうちに財政赤字がみるみる減りはじめるだろう。

 予算を削ったところを中心に失業が発生し、経済も混乱する? 財政が破たんしたら、もっとひどいことになるのは必定。 どちらを選ぶかだ。 そこを判断するのが政治家だが、さてどこまで任せてよいものか。