為替がすこし円安に傾いてきている。 総選挙で登場する新政権は、民主党時代よりも積極的な金融政策を打ってくるだろうといった期待感で円安というのもちょっと妙なんだが、現に円はドルやユーロに対して安くなっている。
ここで確認しておきたいのは、円をどうのこうの言っているのは日本人1億2680万人の間だけということ。 日本人以外の地球上69億人にとって円は単なる投資対象のひとつでしかない。 買って儲かると思えば買ってくるし、売りで稼げると判断すれば売ってくる。 他にたとえば金など、より儲かりそうなものがあればそちらに行ってしまう。
マーケットは力の世界だから、1億余の日本人が必死に守ろうとする円の価値観など、69億人の儲かるかどうかの動きには太刀打ちできるわけもなく、瞬時に蹂躙されてしまう。 まして、為替はマージャンと同じゼロサムゲームだから、全部を合わせると必ずゼロになる。 つまり、円が買われればその相方としてドルやユーロが売られるし、ドルが独歩高して円やユーロが売られるということになる。
この数年の円高も、円が買われる状況にはこれっぽっちもなかった。 とはいえ、あれだけ派手にユーロやドルが売られたら、もう否応なしに円は高くなってしまう。 その円高に輸出企業は苦しんだし、マスコミは円安介入を訴えた。 それでも、どうにもならなかった。 なにしろ、世界はユーロやドルを持ちたくないという判断に傾いていたのだから。
要するに、為替がどう振れるかは日本の状況がどうのこうのなんて、まったくの無視である。 世界のマネーがどう動くかによって、円高にもなれば円安にもなる。 よく、専門家などが円は大暴落するとご託宣を並べるが、それはドルやユーロの大暴騰を意味するわけで、果たして米国や EU 政府あるいは世界のマネーが認めるかどうか。 もちろん、円を売って儲かりそうと判断すれば、世界の投機マネーは動く。
どう転がるか知れたものではない為替相場など横へ置いてしまって、円高なら円高の時にやっておいたほうが有利なことを、どんどんやっておくに限る。 海外のもが安く買えるのだから、資源権益だろうと企業だろうと、いずれ必要なものは片っ端から買ってしまえばいい。 その結果として円が安くなっても、世界は何の文句も言わない。
マスコミや専門家が主張する円安介入を下手にやったところで、世界の反発を招くだけのこと。 まして、円売りドル買いでどっさり買ったドルで、米国債を買い増しするなんて愚の骨頂である。 10年物で1.6%台の利回りでしかないし、世界的にも国債バブルがささやかれている折、わざわざ損をしに行くようなもの。
為替は軽々しく考えないことだ。 それよりも、円高の間に将来の利益につながる行動をたっぷりやっておこう。 これも、長期投資の考え方である。
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