リスクを一定化する

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 今日の日経新聞に、きわめて示唆に富む特集が載っている。 年金など機関投資家の運用のみならず、個人の資産形成にも参考となる面が多い記事である。 

 一読されたら分かるが、すべてその通りと、納得がいく指摘ばかり。 2007年8月のサブプライム問題発生と、2008年9月のリーマンショック以来、世界の運用環境がズタズタといって良いような状況にある。 伝統的な分散手法も効果を発揮しないし、なかなか成績も上がらない。

 そんな背景もあって、リスクを一定化させる運用といったものを、早速実行に移してみようかという気にもなる。 年金の運用資産獲得営業にも活用できるし、投信の新規商品としても販売がしやすい。

 ただ、われわれの長期投資には残念ながら適用できない考え方である。 リスクを一定化させるのも、一般的なリスク分散も、”現状の投資環境において、どうしたら良いのか” の判断に過ぎない。 ちょっと状況が変われば、リスクの一定化も分散も、そもそもの想定の根っ子からガタガタに崩れてしまう。

 具体的にみてみよう。 いま先進国政府や中央銀行は金融危機を克服するため、史上空前の金融緩和とゼロ金利政策で、ジャブジャブに資金を供給している。 それもあって、米国債の10年物の利回りが1.6%を切っている。 日本にいたっては、年0.7%台だ。 その横で、株価は大きく売られて評価損を抱えている投資家は多い。 こんな状況下でリスク一定化を図ると、将来どうなるだろうか?

 たしかに現状は、 リスク回避という面で一番安全とされる国債投資に世界のマネーが集中している。 しかし、ジャブジャブの資金供給と、それによる中央銀行の異常なまでの資産膨張は、お金の信用力すなわち価値を引き下げて、将来のマネタリーインフレにつながっていく可能性が高い。 そのうち、モノの値段が上がり金利も上昇する方向にあるわけだ。 つまり、国債は値下がりする。

 一方、先進国中心に大量の資金供給とゼロ金利政策を続けているが、これは金融機関の経営支援の面もあるが、ビジネス活動全般を活発化させる要因でもある。 どこかで企業の業績が急改善して、株価が上昇に転じてくるのは、経済人なら誰でも考えること。

 となると、いまここで超低金利が続くという想定で国債中心の投資に集中したり、リスクを引き下げようと株式投資のポジションを減らすのは、逆にとんでもない将来リスクを抱え込むことになる。 

 われわれ長期投資家は、いつでも5年10年の期間で大きな楽しみが期待できる方向にのみ、大事な虎の子を置いておこう。 目先の小さな計算で、将来の大きなリスクを抱え込むのはゴメン蒙る。

 今日はインベスターズTVの生放送に出演します。

 

 ブログへのコメントや質問への回答は、毎月第2第4水曜日20時より配信される生放送番組、「インベスターズTV水曜劇場」にてお答えしております。 当ブログでお答えすることはありませんので、ご注意ください。 インベスターズTV水曜劇場は http://www.investors-tv.jp でご覧になれます。

 

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