およそ130兆円を運用している年金資金管理運営機構 (GPIF) が、長いこと固定してきた運用指針を見直す方向にある。 これまでは、債券投資は60%以上で株式は15%以下に抑えて、安全重視でいくということだった。
それを、債券は40%程度に引き下げる一方で、株式投資は上限を25%にまで引き上げる案が有力視されている。 これまでの安全重視から一歩踏み出して、すこし積極的にリターンを狙おうということだ。
われわれ運用で飯を食ってきた人間からすると、そんなの当たり前でもっともっと積極化してもいいとなる。 なにしろ、国債中心に債券投資していたところで、10年物で年0.5%にも回らない。 株式なら配当利回りだけでも年2%になる。 それに値上がり益の可能性を考えたら、株式投資を50%~70%に引き上げたとしてもおかしくはない。
一方、年金を管轄する厚生労働省幹部などは慎重派である。 日本経済はまだデフレを脱却していないし、世界経済の成長にも減速感が出ている現在、株式投資でリスクを取るのはどんなものかということだ。
こういった慎重論が、まさに年金運用の限界を示すものである。 公的年金は国民の老後を守るものであり、安全重視の慎重な運用が望まれるという考え方に、誰も異を唱えることはできない。 ところが、そんなもの投資運用とは言えない、しょせん資金運用の世界のものである。
資金運用の世界であれば、別に大きな運用組織を構え大きな費用をかけて、運用のまねごとをする必要はさらさらない。 せいぜい、新発国債を購入して満期まで保有することで、半年ごとの利金収入を期待すればいいだけのこと。
一度、公的年金の過去の純運用利回りを検証するといい。 かつての年金福祉事業団そして現在の GPIF によるトータルの運用成績から、運用管理業務に関連した総コストを差し引いたネットの成績を出してもらう。 それと、単純に長期国債を満期まで保有していた利回りと比べてみるのだ。
過去10年でも30年でも40年でもいい、一度しっかり検証してみよう。 おそらくだが、資金運用でガチガチになって運用のまねごとをしてきたのは、壮大な骨折り損のくたびれ儲けだったという結果が出るはず。
年金でもなんでもそうだが、投資運用は虎穴にいらずんば虎児を得ずである。 安全重視で良い成績をなんてのは作文の世界。 それを後生大事に守っているから、年金の運用成績は上がらないのだ。
これは自分の長い間の持論であるが、公的年金の運用なんてやめてしまおう。 現行の保険積立て制度も廃止して、高齢者層への基礎年金は全額税金でカバーするようにした方が、コストを大幅に削減できるし国民経済的にもプラスとなる。
基礎年金で不足する部分は、国民一人ひとりの意思と判断で自分年金づくりに向かえばいい。 国はせいぜい税控除で支援するぐらいでいい。
自分年金づくりとなれば、われわれ運用サイドが経験と能力を前面に出したガチンコ勝負で、受益者の期待に応えていくだけのこと。 さわかみファンドだったら、こんなところで国債購入で安全重視なんてこと言わない。 堂々と株式100%の投資を貫いて、長期の大きなリターンを狙っていく。
まして、これだけ安くなっているのだ。 ここは、資金ある限り株式を買っておきたいところである。