帳簿上のやりくり vs. 富の増殖

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 日本の財政は危機的な状況を深める一途だが、なんとか綱渡りでしのいでいる。 綱渡りといっても、日本全体を巻き込んだ帳簿上のやりくりに過ぎないのだが。

 帳簿上のやりくり? そう、国の財政はこの20年ほど毎年の予算の40%前後を国債発行という借金に頼っている。 その国債を民間の金融機関や年金が購入する。 昨年の4月からは、日銀も強力な国債購入者となって登場してきた。

 国の借金はどんどん増えていって、もう1039兆円にも達した。 その借金の大半が国債購入ということで、国から国債保有者に肩代わりされているわけだ。

 そして、国債保有者にとっては資産勘定となっている。 なにしろ、超低金利下なりの利金収入は得られるし満期が到来すれば元金が戻ってくるのだから、帳簿上は立派な資産勘定である。

 問題はここからだ。 満期が到来すれば国が元金を戻してくれるといっても、その原資はまたぞろ借金の積み増しである。 その借金をさらなる国債発行で、国債保有者に肩代わりさせていくわけだ。

 これって、金融機関や年金そして日銀といった国債保有者を巻き込んだ壮大な帳簿上のやりくりではなかろうか? 借金が国債に振り替えられる繰り返しで、国と国債保有者とを合わせた帳簿はどんどん膨れ上がっていく。

 そこには、富の増殖という経済的な価値の高まりは、かけらもない。 表面上はまわっているから、なんとなく良い気持ちになれるものの、その実ただ借金を重ねているだけの花見酒の経済にすぎない。

 幸いなことに、日本経済全体では国の借金財政に頼ることなく富の増殖に励んでいる企業や個人が、圧倒的多数である。 しかし、そういった企業や個人が生み出す毎年の付加価値額つまり国内総生産 (GDP) に対し、国の借金は2倍以上に膨れ上がっているのも事実。

 どこかで財政のやりくりが破たんをきたすのは避けられない。 その修羅場を見たくないというのなら、日本中が予算に頼ることなく富の増殖に励み、国の税収を増やしてやって財政赤字を解消するしかない。

 アベノミクスもそれを目指しているのだろうが、どうも中途半端である。 なにが欠けているのかって? 富を増殖しようとする企業や個人を、もっともっと前向きに行動させるためのインセンティブが小出しに過ぎる。

 関連各省庁の言い分は抑えて、先ずは大幅な規制緩和と減税策をどーんと打ち出すことだ。 経済活動を活性化させるには、各省庁との調整など百害あって一利なしである。 なにしろ、官僚のほとんどはビジネスというものを知らないのだから。