公的資金、競争運用させるべし

Browse By

 昨日の日経新聞によると、GPIF(年金積立運用管理機構)など公的年金や日銀といった公的資金の株式保有が、上場企業の4分の1で筆頭株主になるとのこと。

 まだまだ公的資金の日本株買いが進む方向にあるので、公的資金が日本企業の筆頭株主になる比率はますます高まることになる。

 筆頭株式の件のみならず、公的資金による日本株保有比率がどんどん高まるのは、市場機能を歪めるという意味でもよろしくない方向である。

 なにしろ公的資金は公的という冠がついている以上、個別株投資で恣意性が働いているような疑いは避けたい。どうしても、平均株価などインデックスやETF(株式上場投信)を買うことになる。

 すると、しっかり経営している企業のみならず、もう時代適合性や競争力を失った企業も一緒くたで、公的資金の株式ポートフォリオに組み入れられてしまう。

 本来なら市場から淘汰を促されるような企業も自動的に購入されると、市場が持つ優勝劣敗と適者生存を促す企業淘汰の機能を、ないがしろにしかねない。

 また、多くの企業で公的資金が筆頭株主になることで、企業統治すなわちガバナンスも不透明になりかねない。 かつての銀行や企業による株式持ち合いと似た、なあなあの企業経営を大株主が是認する懸念も出てくる。

 また年金の運用は、もともと非常に難しいものがある。 年金を積み立てている人たちの老後設計を念頭に置きながらも、いま年金給付を受けている人たちにも良かれとする運用には、どうしても無理が重なる。

 そこへ加えて、年金は大事なお金だからということで、毎年の運用にああだこうだ厳しくチェックが入る。 マイナスの成績が出ようものなら、それこそ大変である。

 たとえば、2014年度は12兆円とかの運用益が出たのはよくやった程度に歓迎されただけ。 ところが、15年度に5兆円のマイナスが出たのには、あちこちから蜂の巣を突っついたような批判が出ている。

 そういった批判にさらされていると、運用者は自然とマイナスの成績を出さないよう、投資リスクを過剰警戒した運用に傾いてしまう。 それでは大した運用成績は望めない。

 はっきり言って、年金の運用はやめた方がいい。 一度、公的年金の運用にかかわる総コストと、運用実績とを比べてみるといい。 おそらく、骨折り損のくたびれ儲けとなっているはず。

 ともあれ、どうしても公的資金で株式投資するのなら、運用会社を投信委託会社の中から公募して、日本株の現物株運用という縛りで新ファンドを設定させる。 その上で、完全にオープンな運用競争をさせればいい。

 具体的には、応募してきたところには均等に運用資金を与える。 そして、2年目以降は積み上がってきた累積の成績でもって、資金分配に差をつけることにする。 投信会社には、ビジネスチャンスと誇りでもって運用成績向上のインセンティブとさせる。

 各社は投資対象企業の取捨選別はもちろんのこと、議決権行使から企業ガバナンスのチェックまで、すべて運用会社の責任として執り行う。 毎月、運用状況から成績まで公表させるから、恣意性など働きようがない。

 より良い運用成績を出そうとすれば、個別企業のリサーチに力を入れざるを得ない。 それはそのまま、市場での企業淘汰を促すことになる。 公的資金の名にふさわしいフェアな企業選別が、競争運用の中で自然体で進められることにもなる。

 もちろん、アベノミクスで期待する株式市場の浮上による日本経済活性化にも直結する。 オープンでフェアな競争こそ、市場が最も好むところである。

 ★広告 さわかみグループが支援した映画「ザ・テノール」のDVD発売中! あの感動をぜひもう一度!! http://scpshop.jp/