ちょっとした縁で、オペラの世界に足を踏み入れてしまったが、はじめから「やってやろう」という意識があったのは事実。
最初は直感での「やってやろう」だった。 それが、時間が経つにつれて「これ、時代が必要としているぞ」という認識に変わり、その確信がますます高まって今日に至っている。
時代が必要としているとは? 世界的にみて、オペラのみならずクラシック音楽の分野でもスポーツ同様、興行的な成功つまり商売として儲かるかどうかが前面に出すぎている。
いってみれば、札束で芸術家を引きずり回して良しとする圧力の横行である。 テレビ局や企業スポンサーがつかなかったら、オペラ公演もコンサートもできず、結局は芸術家も食っていけないとする論理だ。
マネーが芸術の上に立ってしまっている、それが本来の姿だろうか? 違うだろう。 芸術はマネーとかを超えたところのものであり、心の贅沢であるはず。
現状は絶対におかしい。 そう直感して、オペラにのめり込んでいくにつれ、オペラやその関連の仕事に人生を賭けている人たちの純粋さに、あちこちで触れるではないか。
オペラ芸術に生きている人たちの多くが、「とにかくオペラが好きだ。 オペラでなんとか食っていけたらいい」で、すごく純粋に生きている。
もちろん、役をもらわなければ食っていけないから、ある程度の仕事心はもっている。 しかし、気持ちはいつも芸術の中にある。
そんな彼ら彼女らと一緒に、とことん芸術性の高さを追求していってやろうという、挑戦心がどんどん高まってきたという次第である。
オペラにのめり込んでいくにつれ、いろいろわかってきた。 世界の風潮となっている興行上の成功第一主義の背景では、エージェント、テレビ局、企業スポンサーなどの利益追求が甚だしい。
彼らは大きな儲けを手にするのが唯一の目的で、そのためにはオペラ歌手だろうと芸術家だろうと、使い捨ても辞さずである。 売れる間はとことん利用し、売れなくなったら即座に捨てる。
そういった現状を無視したオペラ公演をやってやろうではないか、それがさわかみオペラ財団の挑戦である。 興行主義から一線を画するには、エージェントなど一切つかわず、自分たちでオペラ公演を作り上げていけばいいだろう。 それだけのこと。
素人がそんなことできるのか? 別に、このど素人がオペラのアリアを歌うというのではない。 世界中からトップクラスのアーティストたちに声をかけて、彼ら彼女らに集まってもらえばいい。
その呼びかけは、オペラ芸術をトコトン高みまで求めていくぞの一言。 そして、できるだけ多くの人々に本物のオペラを楽しんでもらうために、できるだけ安くオペラチケットを販売する、したがってギャラは少ないぞと付け加えた。
この青くさい呼びかけに、すぐさまオペラの本場イタリアから反応があった。 本当にオペラ芸術を追求してくれるのなら、喜んで付き合おうじゃないかと。 フィルハーモニー、歌手たちなどが続々と集まって来てくれる。
彼ら彼女らは札束で頬をひっぱたかれるようにして、オペラ公演に駆り出されてきた。 それには、もう辟易としている。 もっともっと純粋にオペラ芸術を追求していきたい。
そういったオペラに生きる人達と一緒になって、いくらでも本物のオペラを追求していける。 それは、彼ら彼女らの喜びであり、オペラ公演を楽しみにしてもらえる人達の感動につながるものである。
ありがたいことに、さわかみオペラ財団を設立して2年余、もう既に世界のトップをいくオペラ芸術家をいくらでも日本に呼べるまでになった。 時代が、こういった青臭いが本物のオペラにこだわる財団活動を求めていたのだろう。
われわれの挑戦は、まだまだこれからも続いていく。
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