日本経済を活性化させるには、企業の積極的な投資が不可欠ということになっているが、どこまで深く考えてのことだろう。
一般的にというか学術的にいうと、企業でもなんでも将来に向けての投資を高めることは、たしかに経済の拡大発展を推進する一大要因である。
だからといって、やみくもに投資しろ設備を拡大しろと企業を突っついても、ちょっと無理がある。 もちろん、革新的な製品やビジネスアイデアをもっている企業は、誰かに言われなくてもさっさと投資をする。
問題は、その他多くというか大多数の企業である。 よくよく歴史を振り返ってみれば、ほとんどの企業は世の中の需要が高まるのを見越して拡大投資してきただけのこと。
世の中の需要? そう、人々が欲しがっているものだ。 いま人々が何を欲しがっているかが推測できれば、企業は思い切って設備拡大に走れる。
かつては、そうだった。 日本中で人々はより豊かな生活を実現させようと、洗濯機から始まって、冷蔵庫、テレビ、オーディオ製品、自動車、エアコン、マンション、など大型の耐久消費財を買いまくった。
「これは皆が買いたがっているぞ」という需要が見えているから、日本中の企業はすさまじい勢いで設備拡大の競争に突っ走ったわけだ。
ところが、この20数年間というもの、スマホとかタブレット以外にこれといって買いたいものは出ていない。 ほとんどの耐久消費財は買い替え需要が主体となってしまった。
多くの企業にしてみれば、既存の設備過剰への対応で苦しみ続けてきた。 ようやく買い替え需要主体となった日本の消費動向に、生産能力を調整できてきたところである。
そんな状況下にある企業に設備投資しろといっても、「もう勘弁してくださいよ」となるのがオチである。 企業が内部資金をため込むばかりで投資しないと批判されるが、企業にしてみればどんな設備投資すべきか新規需要が、さっぱり見えてこないのだ。
どうすれば良いのか? 需要を創出することだ。 その典型は、国家事業といわれるものだ。 たとえば、国は老朽インフラの整備をはじめとした土木工事などでもって景気対策とする。 ただ最近は、どの企業もたっぷりと設備を抱えており、どこまで設備の拡大投資を誘うかとなると限定的である。
一方、太陽光発電や風力発電などの電力買い取り制度を導入したが、こちらは企業に新規の設備投資を煽る効果は大きかった。
ただ、太陽光発電に関しては制度設計が汎用品の低価格競争を促すだけだったこともあって、中国や米国のメーカーに大半のビジネスを持っていかれてしまった。
国が先導する需要創出は経済のグローバル化もあり、どこまで国内の投資需要を高められるか、よほど上手くやらないといけない。
その点、個人や家計がモノではない方向で消費需要を高めると、これは企業にとって新しい挑戦となる。 もう買い替え需要しか望めない耐久消費財と違って、まったくの新規需要の高まりとなる。
具体的にいうと、文化・教育・芸術・スポーツ・技術・寄付・NPO・ボランティアといった分野で、人々がお金をつかい出すと企業にとっても新しいビジネスチャンスが広がる。
そこに雇用が生まれるし、いろいろな投資需要が発生する。 つまり、モノの大量生産大量販売の時代とは違った、サービス主体の新しい産業が生まれるわけだ。
こちらは汎用品の競争とは違うから、グローバル経済下でも海外勢に押しまくられることはない。 それどころか、おもてなしの心ではないが、日本の良さを世界に売り込むことさえ可能である。
そう、日本経済の活性化の鍵は、以下に個人消費を高めるか、それもモノではなく生活の質を高める方向にだ。 心の満足を追求する方向で、もっともっとお金をつかうようにすることが、究極の成熟経済活性化策である。
★広告 さわかみグループが支援した映画「ザ・テノール」のDVD発売中! あの感動をぜひもう一度!! http://scpshop.jp/