雨降って地固まるという諺がある。 いろいろな歪みが大きな混乱をもたらし、世の中が大騒ぎした挙げ句に収まるところに収まっていく。 そして、あの大騒ぎは何だったっけ、といった落ち着きが戻った状態をいう。
いま世界経済を見渡して整理すると、大きく3つの問題が噴き出ていると思われる。 そして、その3つともそう簡単に収まりそうにない、やっかいな問題ばかり。 地が固まるまでに、まだ相当の雨が降ることになろう。
第1は、金融が実体経済の5倍とか10倍とかに膨れ上がって、お金がすべてといったマネー資本主義の横暴が世界経済を引きずり回していること。
マネーの横暴? たとえば、出資者つまり株主による金銭的収入拡大の要求が何よりも優先し、投資運用や企業経営の短視野化を招いている。
それが、経営者に巨額の報酬を与える一方で、人件費の削減など利益拡大には何でもありの経営を良しとする風潮を高めた。 ピケティが主張する格差拡大も、この流れにある。
短期収益追求の出資者の中には、年金も入っている。 一般生活者の老後を守るための積立金が、運用成績を最大化させれば何をやっても良しの、部分最適追求を各運用担当者に強いているのだ。 おかしな話である。
経済や社会全体の最適など眼中にない年金運用が、毎年の成績さえ確保できれば後は野となれ山となれのマネー転がしを助長している。 その挙げ句に、あの金融バブルを引き起こし、世界経済をズタズタにしてくれているわけだ。
第2は、70年代から顕著になってきた過剰流動性問題。 第1次第2次石油ショックで原油価格が10~11倍となり、世界の富が産油国に集中した結果、世界経済はガタガタとなった。
これはマズイと、先進国中心に大量の資金を供給して、経済運営を維持し人々の生活を守ろうとした。 それが発端となって、世界的な過剰流動性は今日まで延々と尾を引いている。
その過剰流動性だが、1987年のブラックマンデーを引き起こした反省もあり、一刻も早く収めて金融を正常化させようという気運が出ていた。 それが、2001年の同時多発テロ、サブプライム問題、リーマンショックを経て、逆に一層の資金供給となった。
いまや、先進国中心に過剰流動性やゼロ金利そしてマイナス金利で経済を運営するのが当たり前とされている感さえある。 世界中に大量の資金をばら撒き、それでもって経済を維持している姿は、どうみても健全ではない。 その歪みが、第1のマネー資本主義ともリンクしていっているわけだ。
第3は、金利の長期低下傾向。 1983年ごろから世界の長期金利は下げ続け、最近はヨーロッパや日本でマイナス金利というところまで来てしまった。
そもそもは、世界的な過剰流動性と年金資産の積み上がりとが、債券を上がったことから長期金利の低下に拍車をかけていったもの。 そこへ、セロ金利政策やマイナス金利で、さらに世界の債券相場を押し上げている。
金利が低いのが当たり前となると、経済全般にモラルハザードの意識が弛緩し、緊張感のない行動が広がる。 これが、やはりマネー資本主義ともリンクし、儲けたものが勝ちといった歪んだ価値観の横暴を招く。
これら3ッつの問題が世界経済のあちこちで複雑に絡み合って、ちょっとやそっとでは解消できない状況にある。 しかし、その歪みからは次から次へと一般生活者へのしわ寄せを発してくれているのだ。
そして、ひとつ間違えると過剰流動性が次のバブルを引き起こしたり、逆に世界的な国債の暴落と長期金利の急上昇を招くことになる。 また、今回の英国のEU離脱で金融マーケットが大混乱に陥ったようなケースが、今後いくらでも発生するだろう。
こう考えてくると、われわれは長期投資で自助努力を重ねていくのが一番となる。 そして、そういった長期投資の良さを地道に広めていくことだろう。 日本のみならず、世界中の人々に対して。
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