日本の個人投資家はといえば、昔ながらの株価でも相場でも儲かりそうなものなら何にでも飛びつくタイプが大半である。 株式投資であれば、市場で人気化していて上値が大きそうな銘柄をみれば、もうじっとしていられない。
そこへ、証券の営業マンが相場人気が高まっているとか、その企業の収益見通しが上方修正されるであろうなんて語りかけると、急いで買わなくてはとなってしまう。
投信であれば、証券会社や銀行あるいは郵便局の窓口で、いま人気の投資テーマに乗って新規設定されたファンドを強力に勧められると、儲かりそうな気分に酔って買ってしまう。 あるいは、高分配という商品設計だけで、そのファンドがどんな投資をするのかは横へ置いて購入を決める。
そういった投資家層はとみると、実のところ60歳代70歳代の高齢者層が過半を占めている。 ちなみに、証券会社の顧客の平均年齢は60歳代後半という。 銀行の窓口で投信を購入する顧客も60代以降が大半である。
ここからが、今日のポイントとなる。 上に書いた個人投資家層は、日本経済の高度成長に乗っかって人生を歩んできた、いわゆる逃げ切り世代である。 ずっと給料は増え続けたし、年金財政も盤石だったから、小遣い稼ぎの投資で損したところで痛くも痒くもなかった。
儲かればよし、損したところで他でいくらでもカバーできる。 そういった投資家層が日本の代表的な個人投資家像であった。 その人達が、日一日と人生の終わりに近づいていっているのだ。
では、次世代の高齢者層はどんな投資を専らとするだろうか? いまの現役層をみるに、ひと世代前のような余裕はない。 給料は増えないし、年金不安は高まる一途である。 預貯金の金利はゼロ同然だから、なにか別の方法で金融資産の増殖を真剣に考えざるを得ない。
そこで投資をするとなるのだが、もはや損したら他でカバーすればいいなんて、悠長なこと言ってはいられない。 投信を買うのも、小遣い稼ぎになんて次元では済まされない。
これから急速に個人投資家層の意識が変わっていこう。 少しずつでも安定度高く資産を殖やしていきたい、自分年金づくりにつながるような投信を買いたいといった、まともな投資需要が主体になっていくのだ。
ところが、日本の証券界も投信業界もその変化にまったく鈍感で、いまのビジネス最大化にしのぎを削るばかり。 すなわち、高齢者層投資家から稼げるだけ稼いでやろうに終始している。
その横で、新しい個人投資家層に焦点を当てているオンライン証券や直販投信など、新顔の業者が着実に根を下ろしてきている。 投信でいえば、業界全体の0.5%~0.6%の預かり資産でしかないが、直販投信の存在感は高まる一途となっている。
それを支えているのは、新しい個人投資家層である。 なぜなら、われわれ直販投信は営業を一切しないから、その伸びは個人投資家からのアプローチに拠っている。 その直販投信が伸びているのだから、日本の個人投資家層に地殻変動が始まっていると言っていい。
直販投信の預かり資産が業界全体の3%そして5%となっていく頃には、もう地滑り的な地殻変動となっていよう。 さわかみファンドが5兆円とか10兆円の巨大ファンドになっていても、全然おかしくない。