日本では毎月とか隔月の分配を売り(セールストーク)にしている投信が根強い人気を集めている。 一時は、新規設定される投信の大半を分配型が占め、最大手ファンドは5兆8000億円を集めるほどに巨大化した。
これは、世界でも希な現象である。 そもそも投信に期待するものが何なのかからして、日本と世界とでは大きな違いがある。 世界では中長期の運用益を求めて投信を購入するのが普通だが、日本では投信の分配金をお小遣いのように楽しむ向きが圧倒的に多い。
その分配金も、昔は運用益と利金や配当金収入をベースにしていたから、まともな投信の一商品と言えた。 ところが、10数年前から分配型投信の人気が高まり、より高い分配金を売りにした投信の販売競争が激化した。
より高い配当を出そうといっても、その原資を運用益や利金そして配当金収入の中からに限定していると、そう大した金額にはならない。 そこで10年ちょっと前に編み出したのが、元金を取り崩して分配の原資とする手法である。 それを特別分配金という名称にしたから、投資家は飛びついた。
これは、いってみればタコが自分の足を食べるのと同じで、投資家にとっては何のプラスにもならない。 わざわざ高い手数料と信託報酬を払って、自分のお金で購入した投信の元本を取り崩して分配して貰うのなんて、ナンセンスもいいところ。
元本をどんどん取り崩しているから、気が付いたら投信の基準価額が半分とかそれ以下にまで縮小してしまったファンドが激増した。 これはまずいということで、金融庁の指導で昨年あたりから特別分配金を元本払戻金という名称に変えさせた。
今年に入って NISA (小規模投資非課税口座)が始まったこともあって、ただ単純に分配金を期待する投信購入から、運用益の無税化を狙う方にシフトする動きもみられる。 それはそれで良いことである。
ただ、日本の投信購入者は殆どが主体性を持っていないのは変わりない。 要するに、分配金だ NISA だと煽ってくる販売サイドの提案に乗せられるだけで、何のために投信を購入するかがはっきりしていない。
われわれ長期投資家からすれば、分配金など無用もいいところ。 長期投資で一番の肝である複利の雪だるま効果を、はじめから捨てているようなもの。 それでは、財産づくりも何もあったものではない。
NISA ? いまのところ5年の限定制度、恒久化してくれれば長期の財産づくりに組み込められるが、ちょっと中途半端である。 ちょっとばかしの税優遇よりも、じっくり10年20年30年の長期投資を進めていく方が、よほど大きな財産づくりにつながっていく。
投資家は自分の頭でしっかり考えたいものだ。 そして、われわれ直販投信を試しに覗いてもらいたい。 違いは、すぐ分かるはず。