シュレーダー改革と長期投資

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 昨日のシュレーダー前ドイツ首相の講演と討論会は、期待に違わずいろいろ勉強させてもらった。 大事なことは先人の偉業から、自分は何を学びそれをどう生かしていくかだ。 その観点から、シュレーダー改革を長期投資に当てはめてみよう。

 選挙よりも国家の利益を優先したということ。 1998年に発足したシュレーダー政権は当初、議会や国民の意向を尊重する姿勢を保った。 しかし、そんなコンセンサス重視の政策に終始しているとドイツの将来が危ぶまれると判断し、首相によるトップダウンの政策運営に切り替えた。

 そこから、労働市場の大改革を手始めに、大銀行による企業支配から資本市場重視の経済体制への切り替えなど、ドイツ経済に巣食っていた構造的な問題を次々と解消していった。 旧態依然とした経済運営ではドイツが世界のグローバル経済化に乗り遅れるという信念で、改革の大ナタを振るったわけだ。

 その結果は? ドイツの企業は中小企業までもがグローバル競争で戦っていけるほどに経営のダイナミズムを取り戻し、失業率も2005年からみるみる下がり6%を切る水準にまで低下した。 90年代は欧州の病人とまでいわれ続けたドイツ経済は、2000年代に入って拡大 EU での一人勝ちを謳歌するまでに強化された。

 しかし、2006年の総選挙で敗れ、シュレーダー政権は追われた。 後任のメルケル首相はシュレーダー改革の成果をベースに強いドイツを代表してはいるが、目を見張るような政策は影をひそめた。 その辺りは、いずれ歴史が評価することになるだろう。

 それでも、一時は国民に苦い薬を飲ませても、ドイツ経済の体質強化にやるべきことを断固としてやった、シュレーダー改革の成果をドイツ国民は十分以上に享受している。 これが、政治というものだろう。

 長期投資も、まったく同じことがいえる。 現在の経済情勢やら市場動向がどうあれ、そんなものに右往左往しない。 ひたすら強い信念で、世の人々の幸せに資するビジネスを通して自助の発展拡大に邁進している企業を応援する姿勢を貫く。

 シュレーダー前首相は将来に向かってリスクを取る、それが改革だといっている。 まさしく長期投資も将来を見据えて、現時点ではリスクが多いといわれがちな行動をさっさと進めることだ。

 明日は、ヴィレッジ候補地の視察に出かけるため、長期投資家日記はお休みです。