不安と懐疑の中で上昇相場は育つ

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 伝説の投資家、ジョンテンプルトン氏が残した名言がある。 相場は絶望と恐怖の下で生まれ、不安と懐疑の中で育ち、熱狂と歓喜とともに消えていく。 株式市場でも商品市場でも、まさに言いえて妙の至言である。

 日本株は1年前までというもの、それこそ絶望に近いあきらめ感の淵に沈んでいた。 そして、昨年の11月14日に当時の野田首相が衆議院の解散と総選挙を表明したのを受けて、株価全般は反騰に入った。 どうにもならない民主党政権がこれで終わる、そして少しはましな政治が期待できるのではの買いが入ったからだ。

 以前から繰り返しているように、持ち合い解消売りという日本株市場に重く垂れ下がっていた構造的な売り圧迫要因は出尽くしている。 買えばいくらでも上がる需給関係にあったから、11月半ばからの株価上昇はすさまじいものとなった。

 ヘッジファンドが中心となって次から次へと買いを入れていった。 株価は面白いように上がるから、さらに新しい買いが入ってくるといった展開で、5月23日までに日本株市場は70%以上の上昇をみた。

 そこから夏枯れ相場を経て、つい最近までは急上昇相場のスピード調整といった状況下にあった。 ヘッジファンドなどは1年前までの、ちょっと買い上がっては売りを仕掛けたりの相場とつかず離れずのディーリング姿勢に舞い戻った。

 タガが外されたようになったのが一般投資家や日本の機関投資家である。 株価全般が20%近く下がったところを買っていいものか、戻り売り姿勢に切り替えた方が良いのか判断に苦しんだまま数か月が過ぎた。

 いくらアベノミクスに期待するといっても、果たしてこのまま日本株は上昇軌道をたどるのか定かではない。 その横で、米国株やヨーロパ株はジリジリとながらも史上最高値を更新し続けている。 買おうか見送ろうか、まさに多くの投資家は不安と懐疑の中にあったわけだ。

 そうこうしている間に昨日、平均株価は6年ぶりの高値をつけた。 といっても、1989年末につけた日本株の最高値からみると、まだまだ半値以下の低水準にあるが。

 さあ、ここからどうするか? われわれ長期投資家は迷うことなく買い増し姿勢を続ける。 資金があれば、むしろ買いのピッチを加速させたいところだ。

 米国も日本も、そしてヨーロッパも景気浮上にありとあらゆる政策を動員している。 見方によっては禁じ手に近い政策まで駆使して経済活動の活発化にしゃかりきとなっているが、そこで欠かせないのは株価や住宅価格の上昇がもたらす資産効果である。

 少なくとも景気動向が力強い足取りを見せてくるまでは、株価の高値追いは続いてもらわないと困る。 それがどこの国の政治家にも共通している考え方だろう。

 一方、景気が回復基調を強めるにつれて企業の収益動向も上向いてくる。 つまり、業績相場への展開もこれからどんどん加速することになるわけだ。 したがって、こんなところで利益確定とやらで株式の保有ポジションを下げるなんて、超もったいないことになりかねない。