東京証券取引所が昨年から企業価値向上表彰制度というものをやっている。 全上場企業の中から、投資家の立場さらには株式市場の健全な発展という観点からみて企業価値を著しく高めてきている、あるいは常に高水準にある企業100社強をスクリーニングする。
スクリーニング選出された各企業へは、表彰制度の目的や社会的な意義の説明とともに、詳細なアンケート調査票を送付する。 戻ってきた返答書を精査して、東証の専務が率いる事務局が最終候補つまりファイナリスト5社を選定する。
それを受けて、われわれ外部の審査委員3名が専務ら事務局に同行して、各企業の経営者と面談して財務数字やアンケート調査に表れていないところまで掘り下げて質問する。
今年で2年目となるが、スクリーニングされた100社強とりわけファイナリストとして経営トップと面談した合計10社は、いずれもが驚くほどに健全な財務戦略を立てて経営にあたっている。
そんなもの企業経営では当たり前といってしまえばそれまでだが、しばらく前までの ”それいけどんどんで突っ走っては、どこかで空中分解してしまう型” の経営からは変わってきている。 積極的な攻めはしつつも、しっかり財務面のバックアップを怠りなくやっている経営の姿に、かつてとは考えられないほどの安定感が伝わってくる。
もっとも企業の中には、機関投資家などが求める投資家の利益に直結する厳しい指摘を過剰なまでに意識しているところもある。 いわゆる投資価値を最大限に高める経営をしているかどうかだが、機関投資家の多くが2年3年の時間軸で成果を求める。 それと、5年10年先を見据えての企業経営とは整合性が見つけられないものなのにだ。
ともあれ、われわれ長期投資家からすると相当数の企業が、ただ単に投資価値を高めるだけの財務至上主義を超えて、その企業の社会的な価値を向上させようとしているのは心強いことである。
そういった企業であれば、なにかの加減で株価が大きく売られている時には、何のためらいもなく応援買いに入れる。 財務面を確り目配りしながらも積極的な経営をしているのだから、どんなに株価が下がっていても思い切って買えるわけだ。
多くの企業が頑張っている。 長期投資家もそれに応えなければね。