昨日のグレートローテーション(世界的な債券から株式への資金シフト)が時間の関係で尻切れトンボとなったので、その続きを合わせて書きます。 なにしろ、これは今後10年はおろか20ないし30年の長期投資テーマとなるものだから、しっかりと頭の整理をしておこう。
1970年代から82年ぐらいにまでかけて、世界的なインフレと金利高騰で債券投資はそれこそボロボロ状態にあった。 たとえば米国の10年物国債の利回りは10%台を往ったり来たりで、一時的には16%をつけた。
債券価格と金利動向は反比例の関係にあるから、長期債の流通利回りが10%とか16%というのは債券価格が紙切れ同然にまで売られている惨憺たる状態を示す。
その後、1983年ごろから米国の長期債利回りは急速に低下傾向を強めていって、90年代には4%から5%前後に落ち着いた。 これは債券投資家にとって最高の追い風となり、債券価格は素晴らしい上昇トレンドを描いた。
ところが、2007年のサブプライム問題発生や2008年9月のリーマンショックで世界的な金融バブルが破裂し、各国政府や中央銀行が未曽有の金融緩和に踏み切った。 同時に、世界の投資マネーもリスク回避で最も安全とされる国債に避難先を求めた。 それで、米国の長期債利回りは昨年7月に史上空前の1.38%にまで下がった。 債券価格はさらに上昇したわけだ。
ここまで30年にわたって債券投資家にとっては最高の投資環境が与えられてきた。 しかし、状況はそろそろ転換点を迎えておかしくないところまで来ている。
第1に、金融バブルの後始末はまだ終わっていないものの、米国はじめドイツや日本など各国で景気が上向き始めている。 世界の投資マネーにとっては、いつまでも安全重視のリスク回避で縮こまっていると収益チャンスを失う。
どう考えても、米国や日本の国債相場でこれ以上の価格上昇は期待できそうにない。 そんな低利回り債券から、より有利な投資対象を求めようとする動きが高まるのは、もう時間の問題である。
第2に、米国の中央銀行にあたる FRB が慎重に金融緩和の出口戦略を模索しているように、いずれは先進各国の異常なまでの超低金利政策は修正される。 それは日本も含めて長期金利の上昇、すなわち債券価格の下落を招く。
忘れてならないのは、先進各国の金利水準が平常の状態に戻るだけでも、債券価格は相当に下落する。 債券相場というものは一度崩れに入ると、売りが更なる売りを呼ぶ一方通行的な下げとなり、収拾のつかない混乱に陥るのは避けられない。 40年ぶりの悪夢が債券投資家に襲ってくることも考えておこう。
第3に、世界経済はもたもたしつつも拡大基調を今後も続ける。 企業にとってはいくらでもビジネスチャンスが広がっているわけだ。 それを暗示しているのが、米国や欧州株式市場での連日の史上最高値更新である。
株式投資は、金利動向に左右された一律の値動きしかない債券とは違い、個々の企業の成長可能性に対する選別能力が問われるだけのこと。 したがって、いずれ金融バブル崩壊のトラウマから解き放たれた個別株の上昇が注目を浴びることになろう。
第4に、個別株中心に各国の株式市場が活況となるにつれ、もうこれ以上の価格上昇は望めない債券市場から株式への資金シフトは、自然発生的に強まっていく。 その流れはもう始まっていると思うが、そのうち小川のせせらぎから奔流になっていくのが実感されよう。
世界の投資マネーの資金規模からいっても、債券から流れ出す巨額資金の受け皿は株式市場しかない。 したがって、株式市場は長期間にわたって驚くほどの資金流入をみることになる。 それが、グレートローテーションということだ。
長期的な財産づくりにおいて、このメガトレンドに乗らない理由はない。 逆らって国債投資に固執したところで、年1%にもならない利回りと、悪夢のような価格下落リスクが待っているだけのこと。