すごい勢いで円安が進行している。 5か月前までの超円高がウソだったかのように、対ドル対ユーロで円はレートを下げてきている。 これだけの大変化はそもそも、昨年の11月半ばに当時の野田首相が衆議院の解散を決めたあたりからのこと。
どうにもならなかった民主党政権がこれで退場してくれる、ちょっとは日本経済も上向くだろうということで、変化の先取りが為替相場に現れたわけだ。 その後、アベノミクスの発動や黒田日銀新総裁による超積極的な資金供給策で、円安傾向はどんどん進行していった。
ここへきて、1ドル100円が眼の前に迫ってきたこともあって、この先120円まであるいは150円まで円安は進行するといった観測まで出てきた。 まあ、為替相場はそう単純ではないし、こうなるはずだの読みはたいてい外れる。
そもそも為替相場は、ゼロサムの世界。 円が売られれば、その分だけドルやユーロが買われることになる。 したがって、そうそう日本が期待するように一方的な円安が進むとは思えない。
忘れてならないのは、この3年間の超円高で積極的に円つまり日本が買われる要因は、なにもなかったということ。 せいぜい、日本のデフレ進行で実質的な金利水準が高いといったぐらいが円買いの理由づけであったはず。
それよりも、ユーロ危機や米国の住宅不況で、ユーロやドルがめちゃめちゃに売られた。 その相手方として、ドルやユーロに次ぐ巨大通貨である円が否応なしに高くなっていっただけのこと。 そして、昨年終わりごろから米国の景気復調の兆しやユーロ不安の小安状態もあって、売られすぎていたドルやユーロをちょっと買い戻そうかという動きが出始めていた。
そこへ、日本の総選挙や新政権発足で株価が上昇に転じた。 また、大量の資金供給観測で長期金利もさらに低下し、国内マネーの海外投資意欲も高まった。 株高で外国人投資家の買い越しが一気に増加したが、これは円買い要因である。 一方、海外資産取得は円売りを煽ることになる。
したがって、いま株式市場でもやたらと円安をはやしているが、さてさてどうなることか。 このまま日本の景気が上向いていってくれたら、その先で金利高や円高もあっておかしくない。
はっきりしているのは、ユーロ問題は置いておくとして、米国経済の回復ぶりが堅調さを高めてきている。 つまり、ドルは対円でかつてのように売られる一方ということにはならないだろう。 それと、日本経済の回復ピッチとの兼ね合いで為替マーケットは動くのだろう。 つまり、どう転がるかわからないと考えておこう。
為替がどうなろうと、個々の企業の経営は続く。 円高なら円高なりにやるべきことをやっていた企業群は、ここへきての円安で収益力を大いに高めているはず。 そろそろ相場展開にもアベノミクスや円安をはやした全面高の段階から、企業の経営努力をみる選別投資の段階に入っていくことになろう。
われわれ長期投資家にとっては、ここからが相場追いかけ型の投資家との違いをお見せするところである。 今晩のインベスターズ TVの生放送は、その辺の話になるのでは。