無機質な利益追求

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 昨夜、社内で映画鑑賞会があった。 金融バブルの生成から崩壊までを、2時間近くのドキュメンタリーにしたもの。 終わって、フーッと大きなため息がオフィス内を覆った。

 経済の血液であり、経済活動の潤滑油的な存在であるはずの金融という仕事が、90年代に入ってからというもの、実体経済からどんどん遊離していった。 通信技術やコンピュータが高度に発展したところへ、世界的な資金余剰という背景も手伝って、巨額の資金を右から左へ瞬時に動かしては、ひたすら自己の利益最大化を追求するビジネスに変質していった。

 朝から晩まで数字や成績を追いかけていると分かるが、無機質な作業が延々と続くなかで人間性といったものは、きれいさっぱりと失われていく。 否、他人への思いやりとか金融のあるべき論といったものは、敗者のたわ言と即座に切り捨てられてしまう。 マーケット特有の力の世界が、極限まで無機質化してしまっての金融バブルであった。

 映画では、強欲に走った人々がなんの反省もなく、いまだに自己利益追及の手を緩めようとしない姿が浮き彫りにされている。 どれほど甚大な被害と富の破壊を一般生活者や世界経済に及ぼしたかなど、これぽっちも考えていない。 人間らしさはどこかへ置いてきてしまって、ただマネーマネーの人生に浸っている。

 たしかに、あの映画は金融マン達の強欲を痛烈に批判しているから、やや過激な面もある。 しかし、41年にわたって金融バブルの始まりから今日まで、ずっとその渦の中で仕事してきた経験からも、あの連中の無機質さと強欲ぶりは、2時間のドキュメンタリー映画などでは表現しきれないと思う。

 おかしい、絶対にふざけている、そんなものが世の中にはびこって良いわけないだろう、ずっと社会正義感から怒っていた。 それで、なんとしてもやらなければと立ち上げたのが、一般生活者のための投信である。 それを、もって広げていこうとしている、さわかみグループ活動である。

 いまはまだまだ微力だが、世の中の生活者やまともに経営している企業を仲間に引き込んで、強欲の連中に対しマーケットで真正面から勝負してやるのだ。 彼らは無機質の数字追いかけ屋で、自己利益をむさぼった後は野となれ山となれの価値観しかない。 こちらは人々の連綿と続く生活を守ろうとする熱い思いを背にしている。 どちらが勝ち残るか、歴史の評価を待つまでもないだろう。

   

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 本を出しました。今回は電子書籍版として、スッと読めるボリュームに抑えました。 さわかみ投信現社長の黒島の本も合せてご紹介します。

 
 澤上篤人「お金をまわして日本を元気にさせよう」
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 黒島光昭「特許物語」
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