長期投資家の論理

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 ようやく構想がまとまった。 およそ3年前から書き始めて、5分の2ほど進んだところで宙に浮いてしまったもの。 残りの5分の3部分をどう持っていくかで、どうやら方向付けができた。

 当初は、「長期投資家の企業分析」という書名で、本格的なものを世に残そうと考えた。 世に残すというと大げさに聞こえるが、世の長期投資家にとってバイブルともいえる一書になればと願ってのもの。

 企業にとっての社会的存在理由はなにか? 世の中にどれだけ富を生み出しているかであろう。 つまり、付加価値をどれだけ高めるかだ。

 付加価値の中には、雇用の創出からはじまて、研究開発や設備増強投資、賃借料や利払い費、税金の支払いといった費用項目も入ってくる。 ただ単に利益を高めるだけではない。

 ともすると、株式市場では利益の増加だけを買い材料にしがちである。 利益を高めるには雇用を切り、将来への投資を抑えても構わない。 そういった目先志向の論理では、企業の持続的な成長発展は望めない。

 われわれ長期投資家は違う。 どれだけ社会的に多くの富を生み出しているか、それを投資対象企業に問う。 それなかりせば、応援のし甲斐がない。

 たとえば、雇用の創出や給料の引き上げは、企業にとって負担増加であり、利益圧縮要因となる。 しかし、長期的には消費という形で売り上げ増加につながっていく。 つまり、持続的な成長発展要因となる。

 その辺りを一気に書き進んだところで、筆が止まってしまった。 そこから先、いろいろな投資分析を書き並べてもいいが、それをやると一般の投資専門書と同じようになってしまう。

 それでは、おもしろくない。 理論的なものを含めて、学者先生にやってもらえればいい。 こちらの、44年余の長期投資の経験を、どう生かしたものか?

 ああだこうだ考えては、よしこれで行こうと書き出しても、すぐ筆が止まる。 世に一般的な投資関連の研究書と大して変りない、それではつまらないで書く気が失せる。

 この1週間で、こう考えがまとまった。 「長期投資家の論理」という書名で、長期視野での企業分析から企業応援投資の実践までを、世界の潮流となっているマネー至上主義に真っ向から対抗して書いてやれと。 それでもって、長期投資家のバイブルみたいなものにしてやろうと。

 40年前までは、われわれのような長期投資が当たり前だった。 それが様変わりとなって、いまや短期利益追求のマネーが実体経済を引きずり回すようになった。

 金融バブルが発生したり、リーマンショックで世界経済に大きなダメージを与えたりと、マネーの横暴は目に余る。 それに対抗するには、実体経済から一歩も離れない長期投資家が力をつけるしかない。

 こんな展開で、残りの5分の3を書いてやろうということに決めた。 構想がまとまったので、ここからは一気呵成に書き進めてやろうと、気合が入ってきた。

 明日から、プラスYOU の講演会で岐阜へ行ったりで、次の長期投資家日記は9日(金)になります。