1980年代後半のバブル期を経て、90年代の初めまで日本の財政は健全そのものだった。 税収入は豊かで、大盤振舞いの政治もへっちゃらでこなせた。
その後、土地や不動産がらみのバブル潰しによる資産デフレの深刻化と、不良債権問題の重荷で景気はどんどん落ち込んでいった。 税収入もガタ減りとなった。
一方で、92年9月の総合経済対策を皮切りとする景気浮揚予算は、毎年のように追加設定された。 過去20年間で平均すると、年19兆6000億円ほどが投入されたのだ。
そこへ高齢化の進展で、年金や医療費の予算補填分が急膨張しだした。 年金保険や医療保険制度による積立てでは、まったく足らなくなってきた。 不足分を、一般会計予算で補てんしようというもので、今年度予算96兆円の32%強を占める。
これら、つまり税収減と予算肥大化を合わせると、財政赤字は避けようがない。 かくして、日本の財政は坂道を転げ落ちるように悪化していった。
ここまでは、専門家などが説明している通りである。 実は、それ以上に大きな根本問題がないがしろにされている。 財政赤字拡大の根本問題といってよい。
それは、日本人の多くが自助努力による富の創出よりも、税で食わしてもらう方向へ流れていることだ。 高齢者層による年金や医療費の曝食だけではない。
政府関連の事業体から民間企業まで、国や地方自治体の予算を主な収入源としているところが実に多い。 そういったところは税収増加に貢献するどころか、予算を食うことしかしていない。
日本全体で、富を創出する人たちよりも税で食っている人たちが多くなっているのだから、財政赤字は当然のこと。 いずれ国家財政はパンクする。
どうするか? 大幅な規制緩和と民営化を徹底して、役人の仕事を減らした分を富の創出意欲高い人たちに委ねる。 同時に、民間企業の適者生存による脱落を促進させる。
これだけでもって、税で食っている人たちや企業を大幅に減らせる。 そんな荒療治すると、失業や企業倒産が多発する?
まさに、そこが自助努力の発端となるのだ。 個人も企業も生きていくため食っていくため必死になる、そういった自助意識が経済活動の原点である。
この20年ちょっと、日本経済はじり貧と縮小の道をたどり続けた。 その間、米国やヨーロッパ各国の経済は2倍に拡大した。 日本よりずっと高い失業率に苦しみながらも、個人や企業の自助努力による経済活性化を重視した賜物である。
欧米では格差拡大と経済的弱者が増えている? その点にばかりこだわっているのが、日本の現状ではないか。 このままいくと、経済停滞と財政破たんで税で食えなくなるし、生活困窮者が巷にあふれることになるというのに。
今回の選挙も、日本経済を抜本的に変革すべく、5年10年先を見据えた荒療治政策を世に問うべきところ。 ところが、ほとんどの政治家はきれいごとを並べているだけの感が強い。