銭ゲバ投資と長期投資

Browse By

 世の中で投資といわれるものは、ほとんどが銭ゲバといっていいだろう。 儲けたい儲けたいで血眼になって、一獲千金の夢を追い求める投資家は、むろんその筆頭である。

 そこまでギラギラしていなくても、上手く売り抜けたいとか損を最小限に抑えるなんてのも、如何に儲けるかのテクニックを弄した銭ゲバである。

 運用のプロを自認する機関投資家はどうだろうか? 投資者顧客の資金を預かって、できるだけ多くの投資収益を稼ぎ出そうとするのを仕事としているから、やはり銭ゲバである。 儲けを出せなかったら、顧客はわざわざ運用報酬を支払ってお金を預ける意味がないのだから。

 となると、投資運用ってみな銭ゲバ? 必ずしもそうではないが、機関投資家を始め皆が銭ゲバに走っているところに、多くの問題が噴出してきているのも事実である。

 第1に、マーケットでの価格形成が実体経済の需要と供給の調整という本来の機能からかけ離れて、やみくもに価格変動を追い回すマネーゲームに陥っていること。

 第2に、とにもかくにも運用利回りだということで、成績さえ出せば後は野となれ山となれの運用で、経済や社会に多くのしわ寄せをもたらしていること。

 第3に、これは年金運用に顕著だが、各運用者に成績数字の最大化を求めるため、どの運用も成績さえ出せばの部分最適の追求に走っている。 その結果、経済社会といった全体最適への配慮が抜け落ちてしまう。

 もっとも、いろいろな投資家が好き勝手に自己利益最大化を追求し、時々刻々と出来上がっていく価格が経済活動への情報発信となる。 それがマーケットだという本質論からいえば、上の問題もそう目くじらを立てることではないかもしれない。

 ただ、マネー資本主義ともいわれるように、巨大化したマネーが池の中のクジラのように暴れ回って、世界経済や社会を引きずり回している現実も否定できない。 たとえば、一秒間に1000回のトレーディングが象徴する高速売買が、一体どれだけ経済の需要供給に役立っているのか甚だ疑問である。

 投資はそもそも将来を築いていくことで、投資運用は経済や社会の発展に資するためのものである。 したがって、経済や社会つまり我々の生活からかけ離れたところで値ざや稼ぎに明け暮れるマネーゲームとは明確に一線を画する。

 機関投資家をはじめ一般的な投資ではマネーゲームの臭いがプンプンするが、それは放っておこう。 みなが儲けよう儲けようで血眼になっているのが銭ゲバの世界、そんな修羅場で自分だけうまく儲けられなんて甘い。 どうせ大した儲けにはならないのだから。

 それよりも、投資本来の姿に戻ろう。 マーケットを通して経済の現場に資金を供給するのだ。 皆が売り逃げに走る時は経済の現場が資金を必要としているわけだから、われわれ長期投資家が応援する企業の株を買うという行動で資金を供給する。

 それをリスク資金の供給というが、まさしく投資家の役割である。 皆が逃げたがっている時に、どうぞつかってくださいと資金を差し出すわけだから、皆に喜ばれるし経済が縮小均衡に陥るのを防げる。

 経済が拡大基調に戻ってくれば、投下した資金はありがとうの言葉とともに戻ってくる。 それも大きく膨れ上がって。 これが投資のリターンである。

 世に多い銭ゲバ投資と長期投資との違い、じっくり考えてみよう。 どちらを選ぶのかは、みなさんの自由。 40年余の経験でいうと、経済や社会から一歩も離れない長期投資の方が、安定度も高いし実りも大きいと断言できる。

 今日の午後から北陸へセミナー出張、明日の長期投資家日記はお休みです。 次は、来週の火曜日ね。