地政学リスクと、グローバル企業のしたたかさ

Browse By

 ウクライナ東部での政府軍と親ロシア派武装集団との戦闘、イスラエル軍の対ハマス攻撃に地上軍の投入、はたまたシリアやイラクでの政府と反政府軍との戦闘激化と、世界各地で火花が散っている。 その犠牲者や避難民は、いつもながら一般市民である。

 あまり報道されていないが、アフリカでは部族抗争や内戦に近い殺戮行為があちこちで繰り広げられている。 あるいは、トルコとイラクそしてイラン3カ国にまたがるクルト人の独立国家樹立への動きも無視できない。

 ちょうど今年が第一次世界大戦勃発100周年に当たる。 あの当時、独立を願う民族がヨーロッパ各地で蜂起したり、それを阻止しようとする既存勢力との対立が一触即発の状況下にあった。

 当時の状況によく似ているという見解も、あながち無視できないものがある。 とりわけ類似しているのは、当時の英国フランスそしてロシアといった強国で強い政治指導者に欠ける一方で、ハプスブルグ帝国やオスマン帝国が衰退の途にあった。 現在では、世界の警察官を任じてきた米国が国際秩序に対する意識も指導力も失ってきているというか、あまりに弱腰すぎる。

 いざとなったら強力な武力で押しつぶすぞといった脅威があると、部族間や国家間あるいは宗教対立はそれほど先鋭化しないものだ。 小さな小競り合いが続いている間に、人々の生活基盤はそれなりに出来上がっていって、せっかく獲得した今の生活を失いたくないという気持ちが社会の安定につながっていく。

 それが昔からのパックス・ロマーナとかパックス・アメリカーナであって、強大なパワーの下での世界平和といったものである。 力を背景にしすぎるといったきらいはあるが、人権擁護や民主主義だけでは収まらないのが世界の政治である。

 本来なら国連が世界の秩序と平和を先導するところだが、拒否権を持つ常任理事国の間で一致した行動がとるのは難しいものがある。 となると、世界のあちこちで繰り広げられている忌まわしい戦闘行為は、なかなか収まりそうにないのかも。

 そんな中、グローバル企業の多くは世界各地の人々の生活を支えるべく、地政学リスクにひるむことなく生産や供給活動を続けている。 よく破壊された市街や難民キャンプばかりが報道されるが、その横で一般市民の生活は命の不安に駆られながらも毎日織りなされているのだ。

 どんな時どんなところでも人々の生活がある限り、なにがあっても供給責任を果たそうとする企業活動を忘れてはなるまい。 また、そういったビジネス活動が強大な武力を背景とした平和とは違った、生活の安らぎを通しての平和を築いていくことになる。

 われわれの長期投資は人々の生活を支える企業活動を応援する。 世界各地の発展と成長に寄与することで、武力闘争を超えた生活の安定と安寧を広げていける。 それでもって、世界平和に大きく貢献するのだ。