梅雨が明けつつある。 ここから8月いっぱい、年によっては9月半ばごろまで暑い夏が続く。 冷房費などで電力需要は年間のピークを迎えることになる。
一方、国内のすべての原発は止まったままで、LNG はじめ化石燃料の輸入支払いが急増している。 それが日本の貿易収支に大きなマイナス要因となっている。
今年に限らずだが、日本の電力供給はなんとも心もとない状況にある。 電力源として化石燃料に頼る比率が高まれば、それだけ電力料金が上乗せされる。 だからといって、福島第一原発の事故処理が遅々として進まない中、国民の原発アレルギーは高まる一途となっているのも事実である。
経済全体では別の現実が重くのしかかってきている。 電力コスト増に悲鳴を上げて、産業界を中心として原発再稼働を急げという声がますます高まってきているのだ。 このまま電力料金が高水準でシフトすれば、製造業中心に産業構造の空洞化を加速させ景気回復にも水を差すという指摘も多い。
国としても、ことエネルギー供給という生活のみならず命にも直結する問題を看過できない。 大所高所での判断で、原発再稼働に向けての政策を慎重に進めている。
ちょっと待ってくれだ。 昔から一貫して日本のエネルギー政策には、安定的な電力供給という産業育成策があっても、総合的なエネルギー戦略には欠けている。 水力発電から始まって、石炭火力そして原油・ LNG 発電、石油ショック後は原子力発電への急速なシフトと、大きな発電所をベースとした電源開発がすべてとなっている。
総合的なエネルギー政策とは、いかに安定的かつ低コストのエネルギーを国民や産業界に供給するかである。 それは電源開発に留まらず、節電やら熱エネルギーの有効利用やら、あらゆる分野を網羅してより効率的なエネルギー供給を図ることだ。
ようやく、この3年ほど節電タイプの家電や LED 証明が脚光を浴びて、民間主体に普及が進み始めたところ。 節電と発電とは同じことだから、国は省エネにもっと力を入れていいはずだが、まったくの及び腰である。 流れ聞く話では、電力業界はじめ既得権益化している電源開発推進勢力に遠慮しながら、省エネ政策を小出しにしているとのこと。
ここに、問題の根っ子がある。 電力供給に不安を抱えるのなら、まして原発問題もあるのだから、国としては総合的なエネルギー政策に重心を移して、ありとあらゆる施策を矢継ぎ早に講じるべきだろう。
たとえば、産業用モーターは日本の電力需要の40%前後を占めるという。 そして、日本のモーター規格は古いままで、いまや国際水準よりも低いといわれている。 この際、産業界のモーターを最新技術を駆使した省電力タイプに切り替える政策を、一挙に進めてはどうか。 すごい需要を創出でき、省エネも推進できる。 もちろん、原発依存度は一気に下がる。
原発に依存してしまっている自治体に対しては、新モーターの製造工場建設あるいは古いモーターの解体から資源再利用の仕事を担当してもらう方向で、雇用などを確保できる。
産業用モーターはほんの一例で、ヒートポンプの普及や地中熱の利用など、やれることはいくらでもある。 そういった分野へ日本の技術を集中投入させることが、最も身近で経済波及力の高い成長戦略となるはず。 アベノミクスの柱にすべき課題だろう。
今日はいまから関西、四国への出張。 次の長期投資家日記は来週の月曜日となります。