安値覚えと高所恐怖症

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 日本株市場は1989年末までの長期右肩上がり上昇から一転して、80%強の暴落を経験すると同時に24年間ずっと下げトレンドを続けている。 昨年からの大幅戻りも、長期の株価トレンドをみる限りまだまだ下げ基調にある。

 これだけ長く下げトレンドにあると、投資家のほとんどは本格的な上昇相場というものを全く知らないか、遠い昔の薄れゆく記憶となっていっているかどちらかのはず。

 そういった投資家にとっては、株価が大きく上昇するなんて想定などはじめからない。 株価がちょっと下がると、もっともっと下がるのではないかと不安に駆られる。 少し上がると、もうこの辺が上限だろうと売り逃げに走りたくなる。

 もっと強気に構えたらといっても、できる相談ではない。 多くの投資家が長期低迷相場からくる安値覚えと、高値知らずの売り優先で凝り固まっているわけだ。

 これは個人投資家だけの問題ではない。 機関投資家の大半がやはり長期低迷相場しか知らない世代となっている。 日本の場合、機関投資家の運用担当者たちは社内移動でどんどん他部署に移っていくから、89年末までの上昇相場を経験した人が運用部門に現役で残っている例は皆無といっていいだろう。

 その間、機関投資家の多くがインデックス運用にシフトしていった。 日本株投資の80%近くがインデックス運用でとなってきたので、個別企業のリサーチは見るも無残に廃れてしまった。

 これが、日本株市場の現実である。 上昇相場というものを知らない投資家ばかりで、運用のプロを自認する機関投資家が個別企業のリサーチもまともにやっていない。

 その横で、日本企業がどんどん活力を高めてきている。 グローバル企業としての立場を強化しているところもあれば、国内経済の成熟化に対応して業績を伸ばしているところもある。

 ところが、市場の株価評価となるといまいちもいいところ。 現時点の業績においても、また将来可能性からみても、株価はもっともっと上でいいだろうと思える企業がゴロゴロしているのだ。

 こういった株式市場の上値は想像以上に高値となるのが、世の相場というものである。 なにしろまともに買っている投資家がいない、そして少し上がるとすぐ売りたくなる。 

 株価上昇に半信半疑の投資家ばかりだから、売りをこなして上昇軌道を固めるまでには、かなりの時間とエネルギーを要する。 しかし、ひとたび上昇軌道に乗ってしまえば、もう売り物がないから青天井の相場展開となっていく。

 おそらく、そう遠くない先に20数年ぶりの青天井の上昇相場というものがみられるのだろう。 その裏付けとなるのが、個別企業の業績向上期待である。 

 米国株やドイツ株は史上最高値更新のトレンドにある。 一方、日本株は最高値から半値にもいっておらず、本格的な戻りに入った先が楽しみである。