アルゼンチンのペソ、トルコのリラ、インドネシアのルピア、インドのルピーといった新興国の通貨が売られている。 経済成長のスピードが落ちているとか、先行きの見通しが不透明とかの理由で海外からの資本が流出しているのが大きな要因といわれる。
新興国の経済発展には先進国などからの資本が重要な役割を果たしている。 ひとつは工場建設などの直接投資、もうひとつは機関投資家による投資勘定。
そのうち、新興国の企業を買収したり工場を建設したりの直接投資は、そう簡単に資本引き上げはできない。 その国から撤退すると決めても、従業員の処遇から税務処理まで相当に時間がかかる。
一方、機関投資家マネーは動きが早い。 投資勘定を処理するだけだから、その日のうちに撤収できる。 ここへきての新興国の通貨安は、まさに先進国の機関投資家マネーの流出によるものだろう。
ところで、先進国の機関投資家マネーというものは、いつも同じようなタイミングと同じような判断で同じ方向の行動に走りがちである。 通信技術の発展で情報の同時性が高まり、資金決済のグローバル化も進んできたから、世界中の機関投資家がみな一緒になってドドッ右へ走ったり左に返したりする。
機関投資家の巨額マネーが同時同方向でパッパと動くから、それが世界の金融マーケットの価格形成を過激で過剰なものにさせてしまう。
たとえば、アルゼンチンペソが下がっているとなると、即座にトルコリラやインドネシアのルピアなどに機関投資家の眼が向き、アルゼンチンと同じような通貨安リスクが発生するだろうといった判断を下す。 そういった連想売りが瞬時に新興国全体に広がって、新興国のどこも通貨安となる。
新興国の通貨が全面安になっているといったマスコミ報道が、次なる連想と思惑を生む。 新興国の成長スローダウンが世界経済にマイナスとなるだろうといった読みで、株式を売って現金化しようとする動きが各国市場に広がる。
各国の株式市場が全面安状態になるや、リスク回避で強い通貨が買われたり米国債への逃避が始まる。 それが、円高とかにつながっていく。
こういった世界中を走るマーケットの動揺は、ヘッジファンドにとっては格好の荒稼ぎ局面となる。 もとはといえば、世界の機関投資家マネーが短期指向を高め、どっしりとした投資ではなく何事も計算づくの資金運用に重きを置くようになってきたからである。
しばらくするとわかる。 多くのマーケット変動も後になれば、百家争鳴してネズミ一匹に終わるケースがほとんどである。 われわれ長期投資家からみれば、そんな大騒ぎしてなにが得られたのとなる。
まあ、安いところはしっかり買っておこう。