長期投資と税制

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 証券税制の軽減税率10%が今年いっぱいで打ち切られるということで、税率の低い間に一度利益を出しておこうとする売り注文が続いている。 軽減税率は年内の受け渡しまでということだから、保有株を売却するなら25日が最終約定日となる。 投信の売却なら今日の注文までだ。

 新年からは20%の売却益課税に戻るというなら、税率の低い間に売っておこうという気持ちはよくわかる。 また、現金が必要だから保有株や投信を売却するというなら、税率が低い間に現金化しておくに限る。

 しかしだ、税率だけを意識しての行動であるならば、はなはだ疑問である。 とりわけ長期投資の財産づくりにおいては、意味のないコストを支払うだけで何のプラスもない。

 多くの投資家は税率が低い間に一度売っておいて、早い段階で同じものを買い戻そうとするだろう。 その行動には、証券の売買手数料がかかるし、得た利益の10%が課税される。 これらの費用は、まったくの無駄である。

 もっとも、買い戻す時点で株価なり投信の基準価額が大きく値下がりしていれば、うまくやったとなる。 それは相場次第であって、長期投資家はそんな目先の相場のあやを取ろうなんてことに神経をとがらせない。

 あるいは、年内に売っておくものとは別の株式や投信を買おうとするのかもしれない。 そういう投資判断であるならば、税率の低い間に売っておくのも意味がある。

 ただしだ、ひとつ忘れてはならないことがある。 どちらの行動も、多かれ少なかれ投資家の誰もが考えること。 ということは、年内は売りが先行するし、年が明けてからは買いが多くなる、そういうのが共通認識とみなすことができる。

 相場のことだから、どうなるかは神のみぞ知るところ。 しかし、買い戻しも新規の買いも、相場の押し上げ要因である。 景気も回復基調にあるし、投資環境も相当に良くなっている。 新年の相場展開はかなりの上昇が期待できる。 

 まあ、新年の相場展開次第ではあるが、場合によっては買い戻しも新規買いも相当に高くつくかもしれない。 税制を意識しすぎた行動が裏目に出るやもしれない。

 長期投資家はその時々の税制などに振り回されず、どっしりと構えて複利の雪だるま効果をたっぷりと期待しよう。