よく投資教育とか金銭教育が大事といわれる。 日本経済が発展拡大期を経て成熟化してきたことにより、これからは一人ひとりが投資とか資産形成を考えることが必要だよということである。
かつて高度成長期は給料やボーナスが毎年おもしろいように増えていった。 生活はどんどん豊かになっていったし、将来への不安はかけらもなかった。 毎年かなりの金額を預貯金にまわすことができたし、金利も高かったからそれなりの金融資産を築き上げることができた。
もちろん、定年後は年金をしっかりもらえた。 まじめに働いていさえすれば、人生設計に狂いのない一生が、もう約束されているかのようだった。 世界で例のない幸せ状態が、平均的な日本人のほとんどにもたらされたのだ。
ところが、バブル崩壊前後から日本経済は成熟化の段階に入っていった。 終身雇用制度は崩れ、毎年のベースアップもなくなったばかりか、平均的サラリーマンの年収は減りだした。 もはや、これまでのように人生設計に狂いはないと言ってはおれなくなった。
そこで登場してきたのが、投資教育とか金銭教育が重要だという考えである。 これまでのようにただ漫然と預貯金に励み、生命保険に入っていれば良しの人生設計から、きちっとした資産形成を考えるよう頭を切り替えなければならないということだ。
まさしくそのとおり。 たてとえば、預貯金に置いておいても年0.02%の利子しかつかないから、100万円の虎の子を2倍の200万円にするまで、なんと3600年もかかってしまう。 しかるに、株式市場の平均配当利回りは昨日で1.8%である。 あるいは、うちのさわかみファンドでも年率複利で3.5%と、お恥ずかしい成績ながらも預貯金よりずっとましである。
したがって、しっかりと金融の知識を高めて適切な資産形成をしていくことは、日本人全般とりわけ現役層にとっては大事なテーマとされるわけだ。 なにしろ年金がどこまで当てにできるのか、誰もが不安を感じるのだから。
ただしだ、ただお金が増えればいいではつまらない。 約束はできないが、さわかみファンドでしっかりと長期の積み立て投資をしてもらうと、複利の雪だるま効果で驚くような財産づくりができてしまう。 本当にそれだけで満足してよいだろうか?
これは、42年間の長期投資並びにプライベートバンキングの経験から言えることだが、時間さえあれば結構な財産を手にするのもそう難しくはない。 ヨーロッパのお金持ちの多くが長い時間をかけて巨額のファミリーアセット(家族資産)を築き上げて来たのを間近に見てきたのだから。
そこで問われるのが、どんな風に資産を築き上げたのかの投資モラルと人間性、そして余裕のお金をどう世の中にまわしていくかのカッコ良さである。 その青臭さこそが、ヨーロッパのお金持ちに共有されている価値観である。
われわれの長期投資では、良い世の中をつくっていくというテーマをとことん追求しながら、お金を持つにふさわしい人間になっていこうとする。 世の人々が幸せになって、ありがとうといって戻ってくるリターンこそが長期投資の財産づくりの源泉である。
そんなわけで、来週は7日にハワイで ”長期投資の先に広がる世界” といったテーマで勉強会をします。 したがって、長期投資家日記は1週間お休みとさせていただきます。