日本ではずっと前から貯蓄から投資へといわれ続けている。 お金の流れを間接金融一本やりから、直接金融的な流れを太くしていくことが、成熟経済となった日本では絶対に進めなければならない課題である。
直接金融の流れを太くしていく第一歩が、先ずはこれまで預貯金オンリーだった人々に長期投資を始めてもらうことである。 生活者として大事と思える企業を応援していくのだという考えで、毎日の生活消費で売り上げに貢献し、株価が大きく売られている時は積極的に応援株主となっていく。 それだけで、もう十分に直接金融の世界に第一歩を踏み出せるのだ。
一度はじめたらわかる。 毎日の生活でお世話になっている企業を応援しようと、株価が大きく売られている時に株主になることの意義と果実の大きさが。
意義は、われわれ生活者が株安時にどんどん応援買いを入れることで、株価は早めに下げ止り、投資ファンドなど目先の利益を追求する株主の登場を防げる。 また、全体が下げている中で株価の逆行高は、その企業の社会的なイメージを高めるだけでなく、経営者や従業員を勇気づけることにもなる。
果実は株価上昇がもたらしてくれる。 株価全般が大きく売られている時に応援買いを入れる。 そのうち経済情勢や投資環境が良くなってきて、一般投資家がどんどん買ってくるにつれ、少しずつ売り上がっていく。 この繰り返しが長期投資で、その都度それなりの投資リターンを確保できる。 また、毎回の投資リターンを再投資にまわすことで、複利の雪だるま効果を存分に追及でき、預貯金では考えられないほどの財産づくりとなっていく。
日本の場合、個人の金融資産1517兆円のうち、預貯金マネーは52%の791兆円もある。 この比率は昔からほとんど変わっていない、つまり預貯金ツンドラ(永久凍土)となっているわけだ。 このツンドラをなんとかして10%でも20%でも溶け出させたいものである。 もうそれだけで日本経済は信じられないほどに活性化する。
預貯金の10%あるいは20%といっても、日本の国内総生産(GDP )の16%から33%にあたる、とんでもない金額である。 それだけ預貯金を引き出すマイナス要因を差し引いたところで、日本経済を10%や20%ぐらいは押し上げよう。
なにしろ、預貯金で寝かせておいても、全銀ベースで30%弱が、郵貯で70%が国債購入にまわされて、国の借金の肩代わりとなっているのだ。 一方、預貯金の一部を長期投資にまわすと、経済の現場へ生きた金を投入することになる。 借金の肩代わりと生きた資金の投入とでは、経済効果は天と地ほどに違ってくる。
これは国がやるのではない。 われわれ生活者が自分の意思と夢で、そして子供や孫たちの将来のために、自分の資金を動かすのだ。 長期投資に踏み出すことが、自立して生きていく第一歩となる。 一人ひとりにとっても、日本の将来にとっても、大事な大事な第一歩である。