先進国はどこも同じ悩み

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 米国では予算執行の議会承認審議が進まず、公的サービスの一部がストップしたとのこと。 民主党と共和党の政治駆け引きがもたらしたもの。

 そもそもは、オバマ大統領が打ち出した国民全員をカバーする医療保険制度の導入に対し、共和党が反対しているところから始まった。 対立の根幹は、民主党が大きな政府を指向し財政を拡大する方向にあり、共和党は小さな政府で民間の自助自立の精神を第一にしようというところにある。

 老人や貧困層など社会的弱者にやさしい政治をしようとすると、どうしても財政負担は大きくなる。 その税金は誰が納めるのかと言い出すと、今度は富を創出する人々の経済的活力を削ぎかねないといった問題が噴き出してくる。

 社会にとっては、どちらも疎かにできない重要な問題である。 しかし、問題そのものは二律背反で、一方を取れば、もう一方が捨てられる。 では、どちらにより大きな比重を置くべきかで、民主党と共和党がせめぎ合っているわけだ。

 これは米国だけの問題ではない。 先進国はどこも同じ悩みを抱えている。 経済が成熟化して成長率が落ちてくると、経済のパイをどう分けていくかの利害関係で、国内がぎくしゃくしだす。 そこへ高齢化の進展で社会全体の負担が拡大する一途となるから、問題はさらにややこしくなる。

 面倒なことにというか、民主政治においては当然のことだが、選挙というスクリーニングを通すと、どうしても既得権益を守ろうとする方向に政治が傾いてしまう。

 日本の医療保険制度が好例である。 世界でも最高水準の国民皆医療制度を守ろうとしても、その負担がどんどん重くなってきている。 このままいくと、制度は早晩パンクする。 かといって、たとえば老人医療の本人負担割合を引き上げようとすると、老人切り捨てかといった反対世論が飛び出してくる。

 こういった先進国共有の社会問題は、なんとも微妙で解決するにも難しいものがある。 そうはいうものの、そこに生きるのはわれわれであり、他人事ではない。

 さあ、どうするか? ひとつの解として、長期投資がある。 個人個人が本格的な長期投資で経済的な自立を手に入れていけば、その分だけは年金にしても医療にしても制度に頼る度合いは減らせる。 もし、国民の30%40%が長期投資で経済的な余裕を確立したならば、財政の負担は劇的に軽減できるはず。

 長期投資の舞台は世界の成長をお手伝いするところにある。 その果実が成熟経済に住む人々の負担と不安を軽減するとなれば、先進国どこでも明るい光が差し込んでくる。 このまったく新しい図式を考えるに、さわかみファンドの責任は重いし、やりがいのある挑戦に身が引き締まる。