これだけ巨大な経済で資本の蓄積も進んだ国で信じられないことだが、日本のお金の流れは幅が狭すぎるし、一向に広がっていこうとしない。 これは、日本経済を低迷させている最大の障害の一つといえる。
早い話、個人や家計の余剰資金はほとんどが、何の迷いもなく預貯金や保険それと年金に向かっている。 それ以外の方向、たとえば株式投資や債券あるいは投信の購入には個人金融資産の10%ほどしか向かっていない。
そしてだ、銀行に預けられた預金のうち100兆円を大きく上回る資金が国債購入に充てられている。 郵便局の貯金では70%前後が、簡保は90%で生保は44%ほど、年金は70%が国債中心の債券投資に向けられている。 これらのどれもが、間接金融のお金の流れである。
こういった数字をみるだけでも、日本のお金の流れは間接金融の世界に閉じ込められたままということが分かる。 その結果、預貯金や保険を通して個人マネーは国債購入に向かい、それが国庫に入れられて予算の原資となる。 なんのことはない、国の経済政策に個人マネーを動員しているだけだ。
もし、たとえば個人の預貯金791兆円の10%でも20%でも、個人の意思で経済の現場に放り込まれたらどうなるだろう? 日本経済の規模 (GDP) の16%から33%にあたる資金が経済の現場に投入されれのだ。 とんでもない経済活性化効果が期待できよう。 これを直接金融のお金の流れという。
もっとも、預貯金から79兆円とか158兆円が流出するから、その分は国債購入に回す余裕がなくなる。 それをマイナス要因とみるのは、間接金融にどっぷり浸かった人たちや政官の人々だろう。 われわれ直接金融の世界にいる人間からすれば、事業リスクを取りたがらない金融機関から国債購入に向けられる資金が減り、それだけ国の野放図な予算ばら撒きが抑えられ、日本経済や財政にもプラスと考える。
要は、個人の資金が預貯金や保険に丸投げされ過ぎだということ。 その結果が、無思慮な国債購入と国の予算ばら撒きで、経済の低迷と国の借金の膨れ上がりを招いているわけだ。 なんのことはない、日本の個人や家計はマイナスの循環に自分から飛び込んで行っているだけなのだ。
直接金融の流れが広く太くなれば、こういった矛盾は解消に向かう。 そうはいっても、個人や家計が預貯金から資金を引き出して経済の現場に放り込むのは簡単ではない。 そこで、先ずは長期投資を考えることから始めるのが現実的だろう。
たとえば、われわれのような長期保有型の投信に向けられた資金は、企業を応援しようと株式市場を通して経済の現場に流れ込んでいく。 いまのような経済状況では、決して資金を国債購入に向けることはない。