Too big to fail への反省

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 世界の金融マーケットが、やや荒れ気味となっている。 米国の中央銀行にあたる FRB が超金融緩和からの出口戦略を模索し始めたということで、長期金利が上昇に転じ昨日は2.6%をつけた。 

 たまたま中国もシャドーバンクといわれる影の銀行融資の行き過ぎに歯止めをかける政策に転じたようで、短期金利が急上昇している。 それもあってか、ずっと下落基調にあった上海株式市場は急落している。

 どういった背景であれ、目先のリスク要因には過剰なまでの反応を示すのが金融マーケットである。 とりわけ日本の株式市場は異常なほど下げに敏感だから、あらゆるマイナス材料に付き合ってしまう。

 マーケットの短期反応は横へ置こう。 どれほど悪材料に打ちひしがれていようと、ちょっと買いが入れば即座に上向くのもマーケットである。 どっちへでも転がる短期の価格変動に振り回されていては、長期投資などやってはおれない。

 それはそれとして、世界が少しずつ ”大銀行を潰してはまずい” という考え方に反省を加えようとしている。 日本のバブル時も、世界の金融バブルも、大手銀行や投資銀行が巨大な資金を背景にマネーゲームで突っ走った。 バブルが弾けて出てきたのが、大銀行など大手金融機関を潰すと信用不安が発生し、経済活動に大混乱をきたすという考え方だ。

 大銀行の倒産を防ぎ急激な信用収縮を避けるためにも、大量の資金供給と低金利政策を導入すべきということになった。 その結果、日本では1990年代半ばから、世界は2009年ごろから、長期金利を異常なまでに引き下げる政策に傾斜していった。

 それが功を奏して、金融マーケットは徐々に落ち着きを取り戻し、日本も世界も経済活動は回復に向かうかにみえる。 そうなってくると、超金融緩和や異常なまでの低金利は是正しなければならない。 しかし、出口戦略が取りざたされだすや金融マーケットはたちまち浮き足立ってくる。

 なんのことはない、大量の資金ばらまきと低金利政策で大銀行をつぶさないように配慮してきたが、それがどれだけの意味があったのかをマーケットは問うているのだ。 実際、カンフル注射を止めようとすると、たちまち日本も世界も経済がずるずると落ち込みをみせるではないか。

 どれだけ巨大銀行だろうと、バブルに暴走して自爆したのは経営の失敗であり、株主責任を問うのが民間ビジネスの鉄則である。 その部分は旧勘定として切り離し、経営者や株主たちに後始末は任せる。

 一方、預金業務や資金決済そして信用供与業務は新勘定として、これまで通りの営業を続ける。 必要とあらば公的資金を投入してもいい。 とにかく、日常の銀行業務は整然と行えるようにしてやれば、信用不安も恐慌も発生しない。 異常なまでの資金ばらまきも低金利政策も不要である。

 これだけのことだが、日本も世界も銀行などの政治力が勝って、大銀行は潰せないのトラウマに陥ったまま時間と税金を浪費してきた。 根本的な問題解決にはまだまだ紆余曲折があるのだろう。

 われわれ長期投資家は、いつもいっていることだが、国の政策や政治に振り回されることないようにしよう。 長いめで見れば、経済なんてものは人々の生活とそれを支える企業のビジネス活動に収れんされる。 そこだけを見つめて、長期的な価値の高まりに資金を乗せていく作業を怠りなくしようぜ。