孫の教育資金ということで無税相続できる新制度が順調に普及している。 高齢者の間で眠っている貯蓄を如何に解きほぐしていくかは、日本経済の活性化に不可欠の課題である。 その一環として編み出されたのが、この制度である。
残念ながら、この制度は大した経済活性化効果を生まない。 たしかに高齢者の預貯金が孫の名義に移るが、その資金は信託銀行の預かり勘定となるだけのこと。 孫の成長に合わせて教育資金として少しずつ取り崩されていくが、10年から20年近くかかって消化されることになる。 時間がかかりすぎる。
なにもしないよりはマシだが、どうして教育資金とかの限定条件を付けるのだろう? 税当局からすれば、使途を明確にさせかつ信託銀行預かりにさせることで、野放図な相続税逃れを防ぎたいのだろう。
しかし、経済の活性化という観点からは、形つくって魂入れずの類といわざるを得ない。 孫への教育資金という大義名分よりも、いかに経済の現場に資金を流れ込ませるかが大事である。 いくら政治的に聞こえが良くても、実体は信託銀行に資金が移動するだけでは、預貯金に寝かせているのとそう変わりはない。
どうしたら良いのか? 高齢者だろうと親だろうと、子供や孫たちに株式投信を買ってやることで無税相続ができるようにする。 金額の上限はなしにして、どんどん相続させる。 ただし、買ってやった株式投信は10年間は解約不能とする。
それだったら、相続された資金が株式購入にまわり、経済の現場に長期資金を供給することになる。 景気浮揚の即効薬となるのは間違いない。
高齢者は株式投信と聞いただけで逃げていく? まったく構わない。 最初は、ほんの一部の高齢者や親たちが動くだけで、もう十分である。 たとえば、785兆円の預貯金のたった1%でも長期の株式投信に向かえば、それだけで日本経済を1.6%押し上げることになる。
もちろん、株価全般は相当に上昇するだろうから、株式投信購入に向かう資金はどんどん膨れ上がることになろう。 なにしろ、高齢者は預貯金の60%、金額にして471兆円も保有しているのだから。
この考え方のみそは、子供や孫たちに無税贈与された資金は10年間というもの、長期の株式投資に張り付けられるところにある。 その間に、非常に健全な長期資金の供給を得て、日本経済は驚くほどに拡大発展するだろうから、税収入は大幅に増加する。
税当局としても、相続で取り損ねる税収入をはるかに上回る所得税を確保できるはず。 国は1銭も使わずに、日本経済を元気一杯にさせられるわけだから、実行しない手はない。
こういうのが、実効性の高い経済政策である。 官僚が中心となって成長戦略とかの作文を書いているより、ずっと効果が高いと思うが如何だろう?