日銀が異次元と自賛するほど大幅な金融緩和に踏み切った。 2年間で物価上昇率を2%にまで引き上げて、デフレを脱却するのだという強い意思を政策表明してのこと。
異次元の金融緩和の目玉は、金融機関から国債をそれこそ無制限に近いほど買い取る政策である。 国債を大量保有する銀行など金融機関から日銀が国債を買い取れば、金融機関は売って得た現金を企業融資など経済活性化にまわせるはずという算段だ。
確かに、日銀が無制限といっていいほど大量に国債を買い上げれば、国債価格は天井圏で推移する。 それは、長期金利の異常なまでの低下をもたらし、国債投資の魅力を削ぎ落とすことになる。 つまり、金融機関は保有国債を売って、他の投資対象に乗り換えをしようと判断することになる。
他の投資対象への乗り換えの中に、企業融資の拡大も入ってくる。 日銀による国債大量購入で長期金利が低下すれば、企業の投資活動も活発化し、資金需要も高まるはずという読みだ。
生保などの間で早速出てきたのは、外債投資を増やそうという動きである。 国内の長期金利は0.6%前後と異常なまでに下がったが、ドイツ国債や米国債ならば10年物で1%台半ばの利回りを期待できる。 日本の生保などが外債投資を拡大すれば、それだけ円安要因となるから輸出企業中心に国内の経済活動にもプラスとなるということだ。
そんなこんだで、日銀が異次元の金融緩和に踏み切ったことは、日本経済全般に好い刺激を与えるといった受け取られ方が一般的である。 まあ、景気が良くなることはとにかく歓迎だから、いまのところ国民は黒田政策に拍手喝さいを送っている。
ただ、将来いろいろな問題が噴き出てくるのは間違いない。 早い話、2%の物価上昇を達成するころには、長期金利も2%前後までは上昇しているはず。 そうなってくると、いま国債を無制限に近いほど大量購入している日銀は、巨額の評価損を抱え込むことになる。
もちろん満期償還を受ければ実現損は発生しないが、巨額の評価損は日銀の財務健全性に疑問を生じさせる。 日銀の信用力低下はお金の価値を下げ、その分だけ経済活動全般をインフレ気味にさせる。 それはそのまま、日銀はじめ金融機関全般をして、保有国債の評価損拡大で苦しませることになる。
同じ2%の物価上昇を実現させるなら、もっと整合性のある政策を打ち出せばよい。 国債を無制限に買い入れる代わりに、株式市場で ETF (上場株式投信)を大量購入するのだ。
よく株式は価格変動リスクが大きいといわれるが、それも観念論に過ぎない。 日銀が ETF を大量購入すれば、株価全般はどんどん上昇することはあっても、値下がりの懸念など考えられない。
それどころか、株価上昇で心理効果と資産効果が消費や企業活動をスパイラル的に拡大させて、景気は加速しながら回復していく。 その過程で、2%の物価上昇など達成できてしまう。
ここからが大事なところ。 日銀が国債の代わりに ETF を大量保有すれば、金利上昇で評価損の拡大に苦しむことはない。 むしろ、景気回復や初期中期の金利上昇が株価上昇を加速させ、巨額の評価益をもたらしてくれる。 もちろん、株価大幅上昇の過程でゆっくりと利益確定の売りを出していけばいい。
こちらの方が、よほど整合性のある政策だと確信するが、いかがですかな。