超低金利の弊害

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 日本ではバブル崩壊を受けて、銀行など金融機関を潰さないようにと、1994年ごろから超のつく低金利政策に踏み切った。 超低金利政策の導入で、預金に支払うコストは大幅に下がるから、銀行はそれだけ利ざやを稼げるようになる。 そのまま超低金利は今日まで続いている。

 世界でも、金融バブル崩壊で銀行は大きくて潰せないという論理が支配的になっていった。 2008年終わりごろから先進国が相次いで超低金利政策を導入した。 金融バブルに乗って暴走したヨーロッパや米国の銀行が大きな不良債権を抱えてしまった。 それら銀行の一部でも潰れたりしたら金融市場は大混乱に陥るし、信用不安が広がって経済活動をマヒさせかねない。 それで、超低金利と史上空前の金融緩和を打ち出したわけだ。

 金融は経済活動の血液であり潤滑油でもあるから、滞りなく流れるようにしてやらなければならない。 その意味で、お金の流れの中心となる銀行を潰させられないとするのは、ひとつの論理である。

 一方で、金利は血液や潤滑油の温度である。 温度が低すぎれば固まって流れなくなる。 超低金利政策を長々と続けると、経済活動の現場で血液が流れなくなる、あるいは潤滑油が固まってしまう弊害が顕著となってくる。 銀行など金融は守るとしても、肝心の経済がダメになっては元も子もない。

 日本はじめ欧米先進国の政策には、ここのところがスポーンと抜けてしまっている。 極めて危険である。

 早い話、預貯金に眠る個人マネー771兆円からは、いまの年0.02%の金利だと年間で1542億円の利子収入しか得られない。 それが、平常時の年3%から4%の金利だったら、家計は年に23兆円から31兆円の利子収入を得るのだ。 その半分を消費にまわせば、日本経済にとって年2.4%あるいは3.2%の成長上乗せ要因となる。

 わかる、このもったいなさを? 日本はもう17年も延々と超低金利政策を続けているのだ。 その間ずっと個人や家計は雀の涙にもならない金利収入しか手にできなかった。 それどころか、本来なら得られていた預貯金の金利収入で、日本経済の成長を2%から3%分は押し上げていたわけだ。 それだけの成長エネルギーを金融救済という方向で、きれいさっぱりと削がれてきたのだ。

 

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