経営者の報酬

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 海外とりわけ米国では、企業経営者が破格の報酬を手にするケースが多い。 その企業の業績拡大と利益増加に多大なる貢献をした、あるいは期待するということで、巨額の給与とストックオプションを与えることを取締役会および株主総会で決議する。

 企業は利益獲得を目的としているから、経営者はどれだけ利益向上に貢献するかが常に問われる。 拡大させた利益の一部を経営者は報酬として受け取って当然である。 すこしばかり高い報酬を経営者に約束しても、大幅に業績を向上させてくれたほうが、その企業の従業員や株主にとってもありがたい。

 この考え方はしごく真っ当ではあるが、いろいろ問題を含んでいる。 一番の問題は、経営者の報酬がどんどん巨額化し、最近は天文学的な金額を手にする人も話題になっていることだ。 立派な業績を上げた経営者にどのくらいの報酬が妥当かという一定の目処といったものがないので、どうしても増加傾向に歯止めがかからない。 その結果、一般生活者やその企業の従業員からみれば、もう信じられない巨額報酬が支払われることになる。

 次なる問題は、多くの経営者は業績拡大を請け負ったプロとして、利益向上に見合った報酬を貰って当然という考え方をする。 その考えで極端に走られると、企業の持続的な成長などそっちのけとなってしまう。 むしろ、会社を食い物にされる。

 たとえば、M&Aを手当たり次第に仕掛けて一時的に業績をパッと拡大させる。 その成果を誇示して、経営者は巨額の報酬を手にする。 しばらくすると、無理な拡大がたたって業容は急悪化する。 その経営者は罷免されるが、もう既に天文学的な報酬を手にしてしまっているから、彼あるいは彼女は悠々自適な引退生活ができるというもの。 こんな例が後を絶たないが、その企業の従業員や株主にとってはたまったものではない。  

 こんな馬鹿げた風潮の一端は、年金をはじめとした機関投資家運用が、この30年間どんどん短期指向になってきたことが挙げられる。 毎年の運用成績を追いかける競争に躍起となればなるほど、企業にも短期的な業績向上を求める。 すると、経営者に多額の報酬を約束してでも、利益拡大に走らせる悪循環となる。 

 われわれ長期投資家は、企業のゆったりとした利益成長と、社会的な持続性がマッチングしていなければ応援する価値はないと考える。 その経営者がどれだけ目先の業績向上のプロかもしれないが、後は野となれ山となれの考え方など真っ平ごめんである。

 

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