日本では、政治家にとって消費税の問題に触れることは鬼門とされている。　ちょっとでも消費税の引き上げを言い出すと、選挙に負けるというのが定説になっているからだ。

　おかしな話である。　法人税や個人の所得税の引き上げはあっても、消費税の引き上げは相成らぬなんて不合理そのもの。　財政の逼迫を避け、国の借金を増やさないためには、時として増税も覚悟しなければならない。　その時、どうして所得税なら引き上げは構わなくて、消費税は絶対ダメだなんて、どうにも腑に落ちない。

　ふたつ考えられる。　ひとつは、所得税の引き上げはふところ具合の豊かな法人や個人により多くの負担を求めるから、社会的な公平性が守られるという論理だろう。　その点、消費税の引き上げは弱者を直撃するから、とんでもないという考え方だ。

　いわゆる金持ちはけしからん、といっては正義感を振りまいている人達が、この国には実に多い。　言っていることは世間受けするかもしれないが、あまりに無責任すぎる。　それこそ、世間知らずもいいところ。

　古今東西、いつの時代でも積極的に新たなる富を創出するのは、一部の事業家のみである。　その人達がリスクを取って事業を立ち上げることで、雇用が生まれ消費や投資も高まったりで、経済は拡大再生産のスパイラルに入っていく。　いってみれば、積極果敢に行動していく企業や個人は金の卵を産むニワトリである。　

　どうして、ニワトリを元気一杯にさせて、より多くの金の卵を産んでもらおうとしないのだろう。　経済が拡大成長すればするほど、より多く社会に富を分配できるのに。　金の卵を産むニワトリを元気にさせるには、減税が一番効果があるのは歴史の証明するところ。　それなのに、金持ちはけしからんの一言で思考停止しているのが、日本経済低迷の背景である。

　もうひとつは、税金は取りやすいところから取ろうとする担税主義の悪しき伝統だ。　企業の法人税も個人の源泉税も強制的に徴税できる。　選挙ばかり気にしている日本の政治家にとって、これほど楽なことはない。

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