AIJ 投資顧問に委託していた厚生年金の運用資金の大半が消失した問題で、旧社会保険庁のOBや厚生労働省の天下りが関与していたとか、いろいろ報道されている。
そのあたりは今後の調べで明らかになっていくだろうから、そちらにお任せしよう。 それよりも、一度しっかり考えたいのは、年金運用の是非である。 結論を先に述べてしまえば、年金の運用は辞めた方が良いと考える。 もし続けるのなら、10年20年の時間軸で本格的な長期投資を展開する運用体制を徹底し、5年以内の給付スケジュールには短期の資金運用で賄うことに抜本改革すべきだろう。
こんなこというと、世界の年金基金や運用関係者から総スカンを食らうのは間違いないが、現行の年金運用ビジネスは本来の投資運用から大きく逸脱している。 年金という巨大なビジネスチャンスに、この30数年間というもの、先進国中心に世界中の年金基金や運用会社そして年金コンサルタント会社もみなが群がってきた。
関係者それぞれは年金という巨大なビジネス舞台で自己利益の飽くなき追求はしてきたかも知れないが、果たしてどこまで年金受益者のために仕事してきたかは疑わしい。
年金という大事な資金の運用だから、毎年の成績をきっちりチェックして安定的な成績を積み上げましょうという大義名分で、どんどん短期の資金運用になり下がっていった。 高度な投資理論やテクニックを駆使してリスクをコントロールしつつ、着実に運用成績を出していくというと聞こえは良いが、やっていることは短期の資金運用から一歩も出ない。
年金運用は本来、20年30年後の給付のための運用蓄積を最大化させるもののはず。 だから、年金基金サイドも運用会社も本格的な長期投資を心掛けなければならない。 ところが、それでは年金ビジネス獲得のマーケティングがままならないということで、いつの間にか毎年の運用成績を競って年金ビジネスにありつこうというのが一般化していった。
短期で成績を競うといっても、どれだけパフォーマンスを挙げたかの数字を追いかけるだけのことで、運用の中身はどうでも良い。 そうなると、現場の運用はどんどん無機質化し部分最適を追い求める方向へ傾斜していくのを止められない。 運用成績という数字を無機質に追い求めた先が、デリバティブや証券化商品の大流行つまりあの金融バブルであった。
運用者それぞれが部分最適をがむしゃらに追求した結果が、金融バブル崩壊で世界経済に大きな打撃を与え、人々の生活を苦しめることになった。 全体最適を誰も考えなかったからだ。 もちろん、年金だけの問題ではない。 銀行はじめ多くの金融機関も強欲に走ったのは否定できない。
それでも、世界の年金が本格的な長期投資を徹底していたら、全体最適つまり生活者が安心して暮らしていける社会を構築していこうという命題からは一歩もぶれなかったはず。
明日のブログはお休みです。
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