関西の某大学で2年前から客員教授を勤めている。 もともとは、自分の授業を単に修士のための講座に留めるのではなく、もっと広げて直接金融のメッカにしようではないかという逆提案を大学の方が受けてくれたから。
多くの先任教授が、”それはおもしろい、できるものならやってみたいね” といった総論賛成から、”具体的にどうしたらよいのか打ち合わせしようではないか” というところまで進んできた。 年内の打ち合わせを経て、来年から動き出しそうである。
日本は間接金融一本やりの経済運営システムを徹底させて、世界第2位の経済大国にまでのし上がった。 国内の資金は1銭の無駄もなく銀行など金融機関の窓口で吸収して、それを滞りなく企業など産業界へ流し込ませる仕組みを間接金融という。 このシステムは、国つまりかつての大蔵省が全体を厳しく管理監督することで、はじめてスムーズに国内の資金を循環させることができる。
大蔵省がなにもかもお膳立てし、かつ金融機関は親方日の丸で保護育成する。 裏を返せば、金融ビジネスは免許制で新規参入を制限して競争はさせず、なにもかも大蔵省の言いなりとなるよう銀行や保険会社を育ててきた。 たとえば、ほんの最近まで日本の資金の流れは大蔵省が定める固定金利であったから、民間ビジネスが得意とする創意工夫の働く余地はゼロだった。
もっとも、株式や債券市場など直接金融を代表する資本市場も、規模的には世界最大級にまで大きくなった。 しかし、日本では資本市場も大蔵相が箸の上げ下ろしまで指導し、あくまでも間接金融の補完機能ぐらいの役割に限定させてきた。
たとえば、債券でみると発行市場は世界第2位にまで成長したが、金融機関が国債や社債の新規発行を引き受けて満期まで持ち切るだけだったから、本格的な運用をベースとする流通市場の機能はさして発達していない。 一方、株式市場においては博打場といった昔からの国民認識をなかなか払拭させないままに放置してきた。
一国の経済がある程度の発展を遂げると、間接金融は危険な存在となる。 お金の流れが金融機関の窓口から産業界へと常に一方通行だから、企業サイドに資本の蓄積が進むにしたっって、お金の行き場がなくなってしまう。 ところが、資本の蓄積は国民の間でも進んでいるから、金融機関の窓口へはますます多くの資金が集まってくる。
企業は昔のように融資を頼んでこないどころか、むしろ借入金を返済したいといってくる。 一方で、預金残高や保険の払込金はどんどん加速して大きくなっていく。 お金の行き場を失ってどうしようかと困っていたところで見つけたのが、土地や株の神話である。 日本の地価や株価はずっと右上がり上昇を続けている。 これはいいと、企業や銀行それに保険会社など金融機関が一斉に群がったのが、80年代後半のバブルである。
世界第2位の経済大国で最大の債権国である日本のお金の流れを、すべて国つまり大蔵省が管理規制しようとしても無理である。 筋骨隆々の青年に小学校低学年の頃の服を着せ続けさせるようなもの。 一刻も早く、日本のお金の流れをできるだけ市場の需給調整機能に委ねて、より合理的なものにしていく必要がある。 そうしないと日本のような巨大経済は動かないどころか、機能不全に陥ってしまう。
そう考えると、どうしても直接金融のプレーヤー達をどんどん輩出させなければとなる。 間接金融にどっぷり浸かってきた人たちは山ほどいるが、なにもかも横並びで国の政策に唯々諾々と従っているようでは、とても直接金融の世界で求められるスピードや創意工夫そして決断にはついて来れない。 だから、直接金融のメッカを創造するわけだ。
明日のブログは出張のため、お休みです。
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