やたら不安を煽るような言動は慎まなければならないが、
もしそれが現実になった時にはどう対応するかは、いろいろな角度から検討しておくのは重要である。
危機管理策のひとつである。
国内総生産(GDP)の2倍に達しようとしている国の借金の大半が、国債の発行で賄われている。
今年もさらに国債の増発が見込まれていたところへ、東日本大震災で一層の積み増しが避けられなくなった。
一方で、公的年金の運用サイドでは年金給付の増加もあって、
いよいよ保有国債の売却現金化が始まろうとしている。
かなり以前から、危険水域に入っているといわれ続けている国債発行残高だが、さらに増発される。
それを、これまでは国内の金融機関が片っ端から引き受けてきた。
ところが、大口引き受け先の公的年金が国債売却に踏み切るとなれば、状況は厳しくなる。
米国の景気回復がいまいちで、そこへ新興国のインフレ懸念台頭で国際商品価格が下落したり、
ギリシヤ国債のデフォルト不安がくすぶったりで、世界のマネーは米国や日本の国債に逃避する傾向にある。
これは国債価格の安定要因である。
だからといって、
大量に発行され続けている国債を喜んで買おうとする引き受け手が、ずっと存在し続けるという想定は甘い。
どこかで、もう腹一杯です、もうこれ以上は買えませんといった事態に陥るのは避けられない。
そういった事態がいつ訪れるかは神のみぞ知るところ。
いざそうなったら、国債を大量に買い込んできた金融機関や年金などは評価損の拡大で頭を悩ますことになる。
国債投資で評価損拡大ともなれば、もう新たに国債を買おうという動きは出てこなくなる。
むしろ、早めに売っておこうとする動きが高まる。
それは、国債価格の下落を招き長期金利の上昇要因となる。
長期金利が上昇に転じると、国債のみならず社債を含めあらゆる債券保有者は浮き足立ってくる。
あわてて売ろうとすれば一層の値下がりを招くし、
かといって保有債券の利回りは低すぎるから投資妙味はどんどん下がっていく。
債券価格の下落と長期金利の上昇という、
債券投資家にとっては悪夢のサイクルがどこまで拡大するかは、これまた神のみぞ知るところ。
はっきりしているのは、
世界的に見て長期金利は1980年はじめからもう30年にわたって低下基調を続けてきたことだ。
日本はそれに加えて90年代半ばから超低金利政策を導入している。
投資家も金融機関も長期金利の上昇という事態にどう対処するかで未経験者が大半ということは、
しっかり頭に入れておこう。
相当に混乱するだろう。
繰り返すが、国債下落や長期金利の上昇といって世の不安心理を煽る気はない。
しかし、そういった事態がいざ訪れた時の対応は考えておいた方がいいだろう。