いつも書いていることだが、アベノミクスに限らず国の景気対策はなかなか効果が出ない。 実際、バブル崩壊後25年になるというのに、日本経済はずっと低迷したままである。
どこに問題があるのだろう? 国民がお金をつかわなくなっているからだ。 経済は動いているお金の量とそのスピードとを掛け合わせたものだから、国民がお金をつかわないと経済活動は活発化するはずがない。
一番の問題は、国民の預貯金残高が膨れ上がる一途となっているところにある。 ちなみに、1960年の段階ではGDP が20兆円で、個人金融資産は17兆円だった。
それが、バブル崩壊時の1990年には、GDP が516兆円で個人金融資産は1000兆円となった。 日本経済が大きく伸び、国民も豊かになったのを見事に示している。
ところが、現在はGDP が484兆円に縮んだ一方で、個人金融資産は1717兆円へと大きく膨れ上がっている。 経済の拡大発展を伴わないまま、個人や家計の金融資産だけが増え続けるという、なんとも不健全な姿をさらけ出しているわけだ。
この間、国の借金は1058兆円も増えた。 その横で、国民の金融資産だけが700兆円強も増加しているのだ。 これでは日本経済は縮小トレンドから抜け出せないに決まっている。
いってみれば、国民はお金をつかわず国の景気対策に頼るだけの、あなた任せの状態に甘んじているのだ。 とりわけ問題なのは、834兆円もの預貯金残高である。 将来が不安だからといって、お金を抱え込むばかり。
日本経済が拡大発展していた頃を思い出してみよう。 国民はより豊かな生活を手にしようと、貰った給料やボーナスで欲しいものを次から次へと買い揃えていった。 いわばお金をつかいまくったわけだが、その結果として経済は伸びるは給料は増えるはで、将来の不安など皆無だった。
それがいまや、欲しいものはほとんど手に入り、買い替え需要が主体となってしまった。 それで、お金をつかわず抱え込むばかりとなってしまっているわけだ。
これは成熟経済特有の経済停滞要因である。 それを打破するには、とにもかくにも国民に預貯金マネーを使わせることだ。 それ以外に方法はない。
いくら国がかねや太鼓をたたいて企業の投資を促進させようとしたところで、その効果は知れている。 また、企業に賃金を上げさせて消費を促そうとしても、せいぜい2兆円ほど消費が伸びる程度だろう。
ところが、国民は預貯金残高の10%をつかうだけで、83兆円が経済の現場にまわることになる。 単純計算で17%の成長要因となる。 83兆円を引き出すマイナス要因を勘案しても、10%近い成長が期待できる。
お金をつかうといっても、一体どこでつかうのか? 耐久消費財に対しては、もう買い替え需要しかないのだし。 そこで登場してくるのが、長期投資である。
生活者にとって大事な企業の応援株主になる、そういうお金のつかい方が成熟経済を活性化する鍵となる。 応援するという以上、株価の安い時ほど応援の価値がある。
そういった企業応援投資ほど、安全確実な生活防衛と財産づくりの方法はない。 なにしろ、応援株主になることで経済の現場に資金を供給して、日本経済の活性化と拡大発展に貢献する。
その上、生活者にとって大事な企業のみを選別して、株価の安い時に応援買いするのだ。 それは、潰れっこない企業への安値買い投資となり、お金の置き場所として一番確かである。
試してみれば、誰にでもわかる。 長期投資って、こんなにもすごいのだということが。 まして日本のように、個人の預貯金マネーが834兆円も積み上がった国だ、成熟経済を元気にさせる切り札となる。
この辺り、政治の方でしっかり理解してくれると早いのだがね。 いっておくけど、NISA ではダメだ。 あれは非課税措置ばかり前面に出して、株式の短期売買を促すだけである。 われわれ長期投資家が主張する、個人マネーを株式市場を通して経済の現場に長期滞留させることにはならないのだから。
ともあれ、国が長期投資減税などで預貯金マネーを、本格的かつ長期的に株式市場へ誘導してくれるのが一番。 そしたら、日本経済はあっという間に元気一杯となる。
よしんば、国が動かなくとも個人個人の範囲で長期投資はやっておこう。 どっちみち、預貯金では年0.02%の利子にしかならない。 その点、長期投資でならずっと高い成績の財産づくりも可能である。
それは、さわかみファンドが16年5カ月の実績で証明している。