グレートローテーション、もう始まっている

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 昨日の続きみたいなものだが、債券から株式への世界的な資金シフト、それをグレートローテーションというが、について書いてみよう。

 その昔、1960年代の初めまでは債券投資中心だった運用の世界に、成長株理論を引っ提げた株式投資がドヤドヤと乗り込んできた。

 成長株理論が登場してくるまでは、株式投資いうと投機的なイメージが強かった。 株式はハイリスク・ハイリターンの投資商品ということで、唯一の安全弁である配当金額は高くて当たり前だった。

 すなわち、株価の値下がりリスクを担保するため、株式の配当利回りは常に債券の利回りを上回るべしとされていたのだ。

 それが、成長株理論の登場で株価はどんどん買い上げられ、その結果として株式の配当利回りは債券利回りを下回るのが常態化した。 それを利回り革命という。

 利回り革命は60年代半ばころから70年代初めまで折にふれていわれたが、債券から株式への資金シフトそのものは80年代半ばまで続いた。 これが第1次のグレートローテーションである。

 1983年から現在に至るまで、米国を中心に世界の金利はずっと下げ基調を続けている。 すなわち債券価格は30年ちょっとコンスタントな上昇トレンドをたどり、世界のマネーが続々と債券投資へ向かっていたことを意味する。

 この間、株式から債券への資金シフトという現象は見られなかった。 世界的にみて年金資金中心に運用マネーが急激に膨れ上がったこともあって、債券市場も株式市場も同時並行で拡大に次ぐ拡大を続けたからだ。

 ところが、世界の年金マネーは5年前から積立て額よりも高齢者への支払い額が上回る段階に入ってきた。 年金制度が整備されているのは先進国だけで、先進国はどこも高齢化が進んでいる。 いよいよ年金資金の流出超が恒常化してきたというわけ。

 年金という最大のスポンサーが資金流出の段階に入ってくれば、これまでのような債券を一方的に買い上がることはできなくなる。 ましてや債券価格は天井圏に張り付いたままであり、いつ下落に転じてもおかしくない状況下にあるのだ。

 われわれ長期投資家は、これだけの超低金利下で債券などには見向きもしない。 しかし、世界の投資マネーはいまだ国債なら安全と、多くが債券相場に群がっている。

 そういっている彼らだが、どこかで債券への投資ポジションを引き下げにかかってこよう。 なにしろ、もうこれ以上の価格上昇余地もない一方で、国債の大量発行による値下がりリスクが山積しているのだから。

 一部で債券売りが始まれば、あっという間に世界中に連鎖する。 債券相場を脱した資金は、その資金規模からも受け皿として株式市場に向かうしかない。 それがグレートローテーションの本格化である。

 大きな流れは、ざっとこんなところだろう。 表題に、もう始まっていると書いたが、実はまだ世界でも一部の投資家が動いているだけの状況である。

 しかし、いったん動きが広まりだしたら、あっという間だと断言できる。 たとえば、株式の配当利回りは1.8%を上回っているのに、長期債利回りは0.3%を切っている。

 昔の利回り革命をほうふつさせる、債券高の株安状態にあるのだ。 世界のマネーが債券市場から株式市場へ向かうのは、もう時間の問題である。