1000兆円を超す日本の国債発行残高のうち、その10%近くを外国人が保有してきているとのこと。 これは、日本の国債の信用度が高いとか、そしてその背景となる日本の財政状況が健全だからというわけではない。
欧州中央銀行のドラギ総裁が積極的な金融緩和を進めていて、EU 諸国の国債が軒並みといっていいほどにマイナス金利となってきている結果なのだ。
日本も日銀の黒田総裁が異次元の金融緩和を進めており、マイナス金利もチラチラ出だしてきている。 それでも、EU よりはマシだということで日本国債買いに大量の資金が流れ込んでいるわけだ。
もし付け加えるとすれば、円安が続いている間に日本国債を買っておけば、わずかな金利にプラスして為替益も期待できると読んでいるのだろう。
ともあれ、この現象には要注意である。 先ず、いかにEU との金利差といっても、米国が出口戦略に打って出たこともあって、あちらの金利の方が魅力的になるのは時間の問題である。
米国の金利が少しずつ上昇軌道に乗っていけば、EU からはもちろん日本からだって米国へ資金が流れ込んでいくのは必定。
そうなると、当然のことながら米ドル高も読みの範疇に入って来る。 円がどんどん安くなるかは定かではないが、ユーロ安のドル高という図式は十分にあり得る。
第2に、日本よりも米国の方が魅力的となれば、日本国債に流れ込んでいた資金はあっという間に流出していく。 それは、国債価格の下落と金利の上昇を意味する。
海外の投資家は機を見るに敏で、実現損など全く気にせず、いまやるべきことに集中する。 つまり、日本国債を売るとなったら値段お構いなしで、即座に大量の売りを出してくる。
日本の機関投資家のように、国の政策への配慮とか、阿吽の呼吸なんてものは、まったく存在しない。 となると、短期国債を中心に、かなりの値下がりもあり得る。
おそらく日銀はどんどん買い向かうだろうが、なにしろ100兆円のかなりが売りに出されるのだ。 短資や国債市場が一時的にしろ荒れることは想定しておいた方がいい。
第3に、そのまま大量に発行されてきた国債の値下がりと、長期金利の急上昇にまで行ってしまうことはないかもしれない。 しかしながら、いずれ到来する国債価格の下落局面への警告は発せられよう。
第4に、そういった一連の流れが表面化してくると、株価も一時的に暴落することはありうる。 ただ、30年余りも続いた債券相場の黄金期が終わり、債券から株式への資金シフトにつながっていく歴史的な流れは、誰も止められない。
それを、グレートローテーションというが、われわれ長期投資家にとっては大いなる時代の到来である。 グレートローテーションについては、いずれ詳しく書こう。
いま、はっきり言えるのは、長期の株式投資が大きく報われるようなマーケット展開が、眼前に広がっていくのだ。