久しぶりに運用ビジネスについて書こう。 表記の、「小さく生まれて、大きく育ってしまう」 が運用ビジネスの本質である。
運用ビジネスというぐらいだから、運用を必要としてくれる顧客があってこそのもの。 投資家顧客が資金を預けてくれて、はじめて運用能力を発揮できるし、フィーもいただける。 つまり、食っていける。
いくら運用能力やテクニックに自信があっても、運用する資金がなければ自慢の腕を発揮するどころではない。 もちろん、実績も積み上げられない。 どれだけ運用力を自慢しようと、周りからみれば絵空事でしかない。
一方、投資を委託する顧客サイドからすれば、しっかり運用実績を積み上げてくれなければ大事な虎の子を預ける意味がない。 預ける前に、そこの運用実績をチェックしようとするのは、ごく自然の流れである。
ここに、大きな溝が生まれてしまう。 運用サイドでは、実績を積み上げるための資金がなければ、運用能力を発揮しようがない。 顧客サイドからみれば、なるほどと思える実績を見ないことには、安心して運用を委せられない。
どちらが先というわけにはいかない。 まさに、鶏と卵の関係である。 これが、運用ビジネスの本質であり、難しいとこである。
そこを乗り切るためには、自分知っている身近なところから小さな資金を集めて、先ずは運用を始めることである。 とにもかくにも実績を積み上げることだ。
実績が積み上がってくることで、それをみた投資家顧客が運用を頼みたいといって、徐々に資金を預けはじめる。 運用実績が上がることで預かり資産残高も殖えるし、新規資金の流入も増加ピッチを上げる。
気がついたら、大きな資金を運用していることになっていた。 そんな成長軌道をたどるのが、まともな運用ビジネスである。
まともな運用ビジネス? では、まともでないのとは? 営業などマーケティング力を駆使して運用資金集めようとするところを指す。
資金集めのマーケティングに力を入れようとすると、資金を預けたくなるような魅力ある運用提案をしなければならない。 その最たるものが、儲かりそうな投資テーマだ。
儲かりそうな投資テーマとなると、いま市場で人気化しているトピックが中心となる。 「みてください、投資家人気が高く株価はどんどん上がっていますよ。 このトレンドに一刻も早く乗りましょう」 というマーケティング提案には、フラッとその気にさせるものがある。
市場人気に乗って飛びつき買いしても、しばらくは上昇トレンドを辿ったところで、いつかは天井を迎える。 上昇トレンドが下降に転じれば、そのトレンドに乗った運用はズタズタになる。
かくして、一時はすごい成績を喧伝された運用者や投信ファンドが、ひどい成績に落ち込んで消えていくことになる。 その横で、金融機関や投信会社は次から次へと新しい投資テーマの商品を世に出している。
日本には、10年とか20年はおろか、5年もまともに成績を出し続けている投資商品や投信ファンドがほとんどない。 それは、まともな運用ビジネスが存在せず、金融界全体がマーケティングビジネスに傾斜してしまっているからだ。
投資家顧客とりわけ一般生活者の資産形成を本気でお手伝いしようというところが、われわれ以外にどれほどあるだろうか?